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(狩りと弟と家族)
「ノア、ギメルとアストのところに行く前に、向こうの状況について、一応説明するよ」
僕がラシルの首を噛んでいると、ラシルは僕を膝の上に乗せたため、ラシルの方を向いて尻尾を振る。
「キュンキュン!(ちゃんと聞く!)」
「かわいい……あー、可愛い。ノア~」
「ラシル、パピーが可愛いのは分かる。でも、説明は?」
僕はラシルに抱きしめられたため、もう一度ラシルの首を噛むと、そのままマミーの膝の上に乗せられた。
「ノアが可愛すぎるから、一旦アレフに任せるよ」
そう言って、ラシルは僕の尻尾を目で追いながらも真剣な表情になる。
「今、向こうの状況は……ギメルとアストが狩りをした後で、血だらけなんだよ。それで、まだ狩りの途中。もはや狩場だと思っていいよ。二人は、シノとアルマを使って、ノアを傷つけた奴を狩りに行ったんだ。ノアに対しての言動は許されない事だけど、あれは二人の本心じゃない。シノとアルマは、あの時操られてた……えっと、なんて言えばいいかな。あれは本当のシノとアルマじゃなかったんだよ」
母さんとパパ? でも、母さんとパパは屋敷にいたよ。
「キュ(分かんない)」
「分からなくていい。パピーは自分で見たものと聞いた事を信じればいいんだよ」
そうなの? じゃあ、信じる!
「キュンキュンキュン!(ラシルの言葉も信じる!)」
「パピーはいい子だね。ツガイを一番に信じるのは、大事な事だよ。ラシル、良かったね。これは、パピーに愛されてる証だ」
「知ってる! 嬉しすぎて、今耐えてるところだから待って!」
ラシルは顔を赤くして悶えているため、僕は尻尾を揺らしながら待っている間、マミーに頭を撫でてもらう。そうして、少しするとラシルは復活し、血だらけの知らない場所に行って、知らない人達に注目されても大丈夫かと確認してくる。
注目……見られるのやだ。でも、僕の家族守るの!
「キュン。キュンキュン(ラシル信じる。僕もみんな守りたい)」
「分かった。じゃあ、一緒に行こうか。アレフ、ここは大丈夫だと思うけど、一応留守番頼んでもいい?」
「いいよ。パピーの家を守るのも、ボクの役目だから。パピー、何も考えずに心のままに動いていい。守るものの為なら、時にはイタズラも必要だ。パピーにとっての、"自己防衛の狩り"をしな。いってらっしゃい」
自己防衛の狩り! マミーより前……母さんが教えてくれた事だ。マミーが言ってた。僕の狩りは自己防衛の狩りだって。
「キュッ!(分かった!)」
僕がラシルの肩に乗ると、マミーは手を振り、一瞬で血の匂いがする場所に着いた。目の前には、ギメルとアス兄さんが驚いた様子でこちらを見ていて、周りには嫌な目がたくさんあった。
「「ノア!? なんで……」」
「いやいや、俺もいるんだけど」
ギメルとアス兄さんが口を揃えると、ラシルはボソッと呟き、僕を撫でてくる。
「キュン! キュゥキュゥ(遊び来た! みんないないの寂しい)」
「そうか、寂しいか。ノアが寂しいなら仕方ない。全員狩って終わらせるか」
「イースト国を滅ぼしてもいいね。ノアが望むなら、なんでもするよ」
ギメルとアス兄さんの言葉に、空気がピリピリし始め、僕はすぐにラシルの服の中に隠れた。
ピリピリ痛い。ここだと落ち着く。
「ノア?……ノア、今どうしたい?」
僕? 僕はギメルとアス兄さんに会えたらそれでいいの。ラシルにも言ったのに、なんでまた訊くの?
「ノア、見せなくていいの? 可愛くて綺麗なノアで、自己防衛の狩りをしてみたらどう?」
ッ! そうだった! 僕おっきくなったの見せないと!
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