(狩りと弟と家族)

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~sideラシル~  この王妃は使えると思った。ノアへの謝罪が、ノアを傷つけた事であり、フォキシナを分断させた事はノアに言わなかった。これだけでも、ウェンにとって、ノアを傷つけた事の方が重要なのだと分かる。  そしてもう一つ分かった事は、ノアの狩りは敵を味方にするのではなく、味方になった時に迷いなく自分を守ってくれそうな奴を、狩っている事だった。そのため今までは、魔物や精霊だけが、無差別に狩られていたのだろう。  それにしても……触りすぎじゃない? なんか嫉妬しそう。ギメルの方が嫉妬してるだろうけど。ツノはギメルにもあるわけだし。 「さて、どうするかな。ノアの獲物だけは近くに来ていいよ。辛いでしょ」  俺からノアの獲物に伝えれば、ウェンを触って喜ぶノアの周りに集まり、ノアは元の姿に戻って、ウェンの肩に避難する。そして、急に毛繕いを始めたノアを落とさないよう、ウェンは更に屈んで尻尾を揺らした。 「え、ノアが毛繕いしてる。いくら獲物だからって……」 「ノアはウェンを気に入ったみたいだね。それと単純に、ここの血の匂いが嫌なんじゃない? アストだって、アルマがノアに触った時に見た事あるでしょ」  自分の匂いをどうにかしてから、俺のところに来るつもりだろうね。昔、アルマの薬臭い手で触られた時も、近くの椅子に座って毛繕いしてたし。その時、アルマが話しかけても、何も喋らないで、こうして必死に匂いを取ろうとしてた。  そのうち戻ってくるだろうと思い、俺はウェンに向かって、今後どうするつもりなのかを訊いてみた。すると面白い事に、国王を生きたまま東竜(とうりゅう)の贄とするらしく、死んだ者も全て贄にするつもりのようだ。四竜(しりゅう)に贄を用意するという事は、自分が死ぬまで年に一度の贄を用意しなければならなくなる。  自分が不老不死だって分かってて、そういう事するんだ。別に四竜じゃなくてもいいんじゃないの。 「なんで四竜? 不老不死のお前が、本当に贄を用意し続けられるわけ?」 「ノア様の願いを聞く為です。私は、ノア様の為に東竜を利用します」  ノアの願い? ノアは何を……そもそも、なんでノアの願いを知ってる。さっきは、いつもの言葉しか言ってないはず。 「キュン!(綺麗になった!)」  そこで、ちょうど良くノアの毛繕いが終わり、俺の服の中に潜り込んできたため、中を覗くとノアは鼻をくっつけてくる。  可愛いッ!……じゃなくて、今は願いを訊かないといけない。 「ノア、ウェンに何を願ったの? さっきは何も言ってなかったよね?」 「キュンキュン。キュ、キュン(死んだら食べないと駄目。みんな、また産まれてくるの)」  確かに、ノアなら願いそうだけど……それにしたって、どうやってウェンは気づいた?  ウェンに目を向ければ、ウェンは立ち上がって、俺をまっすぐ見てくる。 「ノア様が、私を欲してくださいました。他の獲物にも、変わった者はいませんか? 私は、この願いを受けとりました」  確かに、ルカとロイドは他の獲物とは違う。ルカはノアのツガイ候補の繋がりが見えるし、ロイドはノクトのツガイになった。ルカの時は……そういえば、ラシルがもっといたら嬉しい、みたいな事言ってたけど……まさか、ツガイ候補を捜す為? それにロイドの時も、あの二人がツガイになったのは、ノアがノクトのツガイを探そうとしてすぐの事だった。
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