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僕はみんなに声をかけていき、どんどん進んで行くと、いつの間にか屋敷に着いていて、ラシルに抱えられた。
「やっぱりこの街は優秀だね。ノアの道案内までしてくれるとは……ノアが声をかけながら進んでたからと言って、普通は屋敷に向かう道に、わざわざ出てくれるなんてしないよ。良かったね、ノア。みんな、ノアが好きだって」
「キュァア!」
僕は嬉しくなって地面に下り、ピョンピョンと跳ねながら、ラシルの周りをグルグルと回る。するとそこに、母さんが来て、僕を名前を呼んだ。
「ノア……」
「キュン!(母さん!)」
僕は、しゃがんで手を広げる母さんの元へ行き、獣人になって抱きつくと、母さんは泣きながら「元気そうで良かった」と言った。
「母さん、母さん! お土産あるの! 海、キラキラで、しょっぱくて暑かった! あとね、大きくなれるようになって、ウェンが獲物になった! それから、それから、ラシルがツガイ!」
話したい事が多すぎて、尻尾を振りながら頑張って伝えようとすると、母さんは僕の頭を撫でながら、ちゃんと話を聞いてくれ、最後に「おめでとう」と言ってくれた。
「キュァア! 母さん、母さんになった! キュッキュッキュ」
前の母さんだ! 嬉しい! 僕のこと無視しなかったよ!
「ノア、落ち着いて。嬉しいのは分かったから」
「アス兄さん、母さんが母さんになった! 嬉しいね」
「ノアが喜んでくれたなら、俺も母上と父上を虐めた甲斐があるよ」
虐めって何? アス兄さんが母さんを直してくれたの?
「ノア、おいで。中に入るよ」
「ラシル! アス兄さんが、母さん直してくれた!」
ラシルの元へ行くと、ラシルは僕を抱えて、嬉しそうに僕の頭を撫でてくる。きっと、ラシルも母さんが直って嬉しかったのだろうと思い、ラシルの首に擦り寄った。
それから屋敷の中へ入り、僕の部屋へ行くと、そこにはパパとノク兄さんとロイドがいて、知らない獣人をパパが押さえつけていた。
知らない人だ。僕の部屋に勝手に……
「キュ? 知ってる匂い?」
「ノア、あれはノアの弟だよ。ただ、悪魔だから気をつけてね」
弟! あれ? でも、なんで大きいの? みんなと同じ。なんで? 産まれたばっかりなのに。
「ノア!……好き」
今の弟の声? 大きいけど、やっぱり僕がお兄ちゃん! 好きだって!
「弟、僕がお兄ちゃん!」
「うん、ノア……好き」
「弟、弟!」
「ルシャ……な、名前。呼んで?」
「ルシャ! 僕、ノアです!」
僕は尻尾を揺らしながらルシャの元へ行くと、パパがルシャを離してくれ、ルシャは僕の鼻に手を近づけてくる。そして、僕が匂いを確認すると、僕の頬を撫でてきた。
「可愛い……ノア」
そこで、ルシャの顔が近づいてきたが、僕はすぐにラシルに持ち上げられ、ルシャがそのまま僕の足にスリスリしてきた。
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