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「ノア……はぁ、ノアの匂い……」
やッ! なんかやだ!
僕は、ルシャから逃げるように元の姿に戻り、ラシルの服の中に避難して、死んだふりをしてみた。すると、ラシルとギメルの怒りの声が聞こえてくる。
「変態。ノアに近づくな。匂いを嗅ぐな」
「本当にね。ノアは俺のツガイだし、もうお前はツガイ候補でもない」
「でも……ノアの、弟。ノアが……好き」
ルシャは喋るのが苦手なのか、ゆっくり話す。その声は落ち着いていて、危険ではなさそうだが、もう少し死んだふりをしていると、ラシルが話を進めた。
「殺したのは悪かった。けど、ノアのツガイは俺だけだから。ノアのツガイ候補でもなくなったから、そばにいるのは構わないけど、変態行為は許さない」
「分かっ……た。ノア」
僕呼ばれてる? 出ても大丈夫なの?
「待て。その前に、どうやって転生した? 世界樹の記憶が届かないんだよね」
「俺も……消された。でも、ノアは……覚え、てる。ノア」
また呼ばれた。次は出ても大丈夫? 何回も呼ばれてる。
「ノア、死んだふりしてるところ悪いけど、出てきてもらえる? 話が進まない。つうか、ノアがいないと喋る気ないらしい」
僕はラシルによって服の中から出されてしまい、死んだふりをしているため、耳と尻尾が力なく垂れたままの無防備な状態を、弟のルシャに見られてしまう。
「ッ! かわ、いい! ノア!」
「キュ、キュゥ(僕、お兄ちゃん)」
ルシャばっかり大きい。みんなとも喋れるのなんで? 僕、頑張って覚えてるのに。
「あ……え、えっと……ご、ごめんね。ノア、怒る?」
「あーあ、弟らしくしないから、ノアが落ち込んじゃったじゃん。言ったよね? 弟らしくしろって」
「フォキシナに産まれた以上、最優先はノアです。ただでさえ、産まれたばっかりで大きくなってるんだ。ルシャ、ノアになんて説明するつもりなんです?」
アス兄さんとノク兄さんは、僕の為に怒ってくれているらしい。ただ、僕には話の内容が理解できず、ルシャは理解できているようだった。
「キュン……キュゥ(ラシル……僕だけ違う)」
「それは仕方ないね。ノアは俺のツガイだし、特別だから。落ち込まなくていいよ。ルシャはノアに会う為に産まれ直したんだ。だから、ノアよりもお兄さん」
僕よりお兄さん? 僕に会う為に産まれたの?
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