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「お兄さんなら、ノアよりも大きくて当たり前だし、話の内容が分かるのも当たり前。それに、ルシャは悪魔だからね。ノアは頑張ってるよ。大丈夫だから元気だして。ね?」
「キュンキュン?(ルシャはお兄ちゃん?)」
僕は首を傾げると、ラシルは僕を抱きしめ、その場にいた全員が、顔を赤くして悶える。
「そうだよ。ノアの弟だけど、お兄さんでいいからね。ノアが今一番優先するのは、獣人の姿を成長させる事。言葉もどんどん覚えていってるでしょ? ノアは本当に凄いんだよ」
ッ! 僕凄い! ラシルに褒められた!
「キュァアア! 僕、凄い! 大きくなれるもん!」
僕は獣人の姿になって大きくなると、ラシルとギメルに隠されてしまい、発情したノク兄さんとロイドを、アス兄さんが部屋から追い出し、母さんとパパはルシャを押さえつけた。
「ノア、ノア!……ノア」
「あ、その色……狩られちゃった? シノ、アルマ、解放していいよ。二人は大丈夫そう?」
「はい、私は元の姿のノアに惹かれますので。アルマもそうです。獣の姿が、一番可愛い」
「それは分かる。ノア、元に戻れる?」
ラシルに言われた通り、元の姿に戻ると、ルシャが僕の毛に顔を埋めてくる。
「可愛い……ノア、好き。可愛い」
ルシャ、これしか言わなくなっちゃった。大丈夫?
「ノア、嫌じゃない? 大丈夫?」
「キュン! キュ、キュン!(大丈夫! 獲物、嫌じゃない!)」
「それなら良かった。アスト、あの二人がまだ扉の前にいる。交わるほどじゃないなら入れていいよ」
ノク兄さんとロイドが、部屋に戻ってくると、二人は僕を抱きしめてきて、徐々に呼吸が整ってくる。そして僕は獣人の姿になり、獲物のみんなに伝えたように、ルシャにも同じ事を伝える。
「ルシャ、ラシルとギメルに共有。今まで通り生きて!」
「ん……分かっ、た」
ルシャに伝わったところで、僕はもう一度元の姿に戻り、ベッドの上にあるクッションを見つけて噛み始めた。
「ノアに狩られたなら好都合だね。ルシャ、ノアに会いたいからって、魔法で暴れるのはもう禁止。それと、知ってる事は全て話してもらうよ」
「あとは、さっきみたいにノアを悲しませたり、傷つけたりするな。ノアの為に生きたいなら、せめてアストの言う事くらいは聞け」
「分かっ、た……ノアの為。でも、知ってる事は……あと一つだけ」
僕が尻尾を揺らし、目を瞑りながらクッションを噛んでいると、突然誰かに尻尾を触られたため、後ろ足で蹴ってみると、パパが悲しそうな顔をしていた。
「キュン(パパ)」
パパは僕が呼んでも、僕の名前を呼んではくれず、耳を下げてクッションの下に潜り込むと、アス兄さんが僕に話しかけてきた。
「ノア、父上は喋れないんだよ。ノアが願えば、父上は喋れるようになるかもよ?」
そうなの? 喋っても、悲しい事言わない? パパ、僕の名前呼んでくれる?
「キュンキュウゥ(パパに名前呼んでほしい)」
すると、パパは驚いた様子で自分の首を触り、「ノア」と優しく僕の名前を呼んでくれた。
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