(狩りと弟と家族)

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~sideラシル~  アルマの件が落ち着き、ルシャの話に戻ったが、ノアが土産を渡したいと言うため、一度話を止めた。しかし、そこでノアに呼ばれたと言う、シノの父親であるジョナンは、土産を受け取ると、嬉しさのあまり倒れてしまった。  ノアは、さっきの話を聞いてジョナンを望んだのか……それとも、ジョナンが土産の存在を察知したのか……思考は世界樹が届かないからなぁ。 「ノア、ジョナンを呼んだ?」 「キュ?(誰?)」 「……ノアのジィジのことだよ」 「キュン!(呼んだ!)」  俺がノアに説明した事で、ノアが何を言ったか理解したのか、ギメルとロイド以外の全員が笑いを堪える。これには、ルシャもいい気味だと言わんばかりに笑っている。  ルシャは、魔力が多すぎて魔法を制御できない赤子のふりをしていたが、ノクトとロイドに監視されても、ずっと赤子のふりをしていた。そこで、フォキシナの中では、誰よりもノアを愛しているアストが「眠るルシャを暗殺しろ」と、ノクトに命じた。  フォキシナらしさがあり、相手が普通の赤子であれば簡単な任務だったが、ルシャは悪魔の力を使って、大人へと急激に成長した。これは、夢魔の特徴の一つであり、夢魔は産まれてすぐに大人にならなければ、唯一の食糧である性欲を食べる事ができずに餓死してしまうのだ。しかし、獣人の肉体を持って産まれたためか、ルシャは大人にならずとも、餓死する事はなかった。  ルシャは正体がバレた事で、ノアを求めるようになり、ノアは自分のツガイだと言って暴れ始めたが、月の一族であるフォキシナ家にとっては、悪魔が暴れても問題なく拘束した。そして何より、ルシャに一番厳しかったのはジョナンであり、ジョナンだけがルシャを憎んでいる。それだけ、ジョナンにとってはノアが大事で、悪魔が息子の腹の中にいた事が許せないのだろう。 「キュン、キュウ?(ジィジ、大丈夫?)」  ノアは可愛らしい前足で、ジョナンの頬をプニプニと押す。ノアにとってジョナンは、身体の弱い存在だが、本能ではジョナンが強いと分かっているのか、あまり心配しているようには見えない。  ジョナンとノアの関係は、バランスがいいんだよね。ジョナンは、ノアに干渉しすぎないし、ノアもジョナンは大丈夫だろうと思ってる。たぶん、そろそろこっちに帰ってくるかな。 「キュン、キュ(ラシル、眠い)」  ほらね、やっぱり来た。一応心配はするけど、心の底から心配はしてない。ノアは意外と、あっさり切り捨てたりする。ノアのこういう行動は、いまだによく分からないなぁ。 「じゃあ、ベッドに行こうか」  俺がベッドに座ると、ノアは軽く巣作りをした後、俺にくっついて眠る。そこに、ノアのお気に入りのタオルを、ロイドがかけてあげれば、ノアはタオルを抱きしめるようにして、仰向けになった。そこを、ギメルがトントンとノアの呼吸に合わせて手を動かせば、ノアは気持ちよさそうに深い眠りにつく。
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