(狩りと弟と家族)

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〜sideラシル〜 「かわ、いい……ノア」 「見ててもいいが起こすなよ。それより、話の続きだ」  ギメルは、寝かしつけに困る母親のように言う。きっと、この先の話をノアの前でするのは、気が進まないのだろう。実際、俺もこれ以上は、ノアの前では話せないと思っていた。ノアは、先程の会話でハッキリと"望む"事を覚えてしまった。今までは、なんでも望む通りになるという事を、ハッキリと教えた事はなかった。例えば、アルマの声のように、目的を与えて、それから魔法を使ったかのようにする。  それが、今回はノアが理解できた事を、ノアは実行してしまった。悪魔になる事を望んでしまっては、ルシャの転生を手伝ったであろう、霊界の黒幕の思うつぼだ。 「ルシャ、ノアを悪魔にする為に何をした?」 「夢魔は……性と夢を……繋げ、られる。発情中、夢に引き摺り込んで……子作りをさせる……くらい、できる。夢から……操るくらい、できる。俺の魂は……あいつが、保管……してた」 「その、アイツは覚えてないってわけね」  そこでルシャは頷き、嘘はないとノアに誓えるかと訊けば、誓えると答えた。確認しなくとも、ルシャが嘘を吐いていない事は分かったが、それでもルシャに関しては、誓わせる事が大事だと思った。 「ノアの今まで通り生きて、って言葉は悪魔としての自分だと捉えてるね? 別にいいけど、ノアを裏切ったらどうなるか分かってるよね? ノアがルシャを見捨てる選択をさせるのは簡単だよ」  すると、ルシャは顔を真っ青にして、不安そうにノアを見つめる。あとは、ルシャの今後次第だが、どうなっても大丈夫なようにはしてある。  俺は、ルシャを兄だと思えばいいと言った。あれは、落ち込むノアを元気づける為ではなく、ルシャは弟ではなく、悪魔だとすり込む為だ。ノアがお兄ちゃんと言ったにも関わらず、ルシャを兄さんと呼ばないのは、まだ兄にもなれていないという事であり、家族ではないという認識になっている。  ルシャは、自分で弟呼びを訂正した。そして、俺は悪魔だとすり込む。そうすれば、ノアの中の家族は別になる。これは、アルマとアレフがいたから気づけた事だ。アルマがパパ呼びをさせていた事と、アレフがマミー呼びをさせた事で、ノアの家族は変わる。  パパ呼びをさせたアルマは、ノアにとって遊んでもらうエサ係であり、父さん呼びになった事で漸く父親となった。マミー呼びをさせたアレフは、自分を拾ってくれた救世主であり、絶対に自分を捨てない、親よりも特別なツガイに近い存在、ギメルと同じような立ち位置だろう。  すり込みは、アストがいたから大事だと分かった。アストを最初に配下にしておいて正解だった。アストにとって、ノアは弟というだけではないのは知ってる。アストは俺に似てるからね……アストは必要とされたいと思ってる。そして、それに関して絶対的な安心を与えるのはノアだけ。ノアにはアストが絶対に必要だ。前世の記憶を持ち、ノアの恐怖を唯一理解できるアストという、同じ世界の転生者が。
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