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~sideラシル~
それにしても、シノとアルマに干渉したイーストとサウスの国王二人は、嵌められたって事だね。あの二人が、フォキシナを目標にして魔法で干渉……というより、ルシャの魂を送ったってところかな。捨て駒として、いいように使われた訳だ。でも、ルシャがあっさりノアに狩られるとは思ってなかったはず。だとしたら、何かしら動きがあるかな。
「ルシャ、ノアを裏切らなければいい話だ。簡単だろ? 頼まれた事以外は何もしない。ノアとノアの大切なのものを守る。それだけでいい」
ギメルは、変な事を考えないよう、ルシャに釘を刺す。すると、ルシャは目を輝かせて、コクコクと頷いた。ルシャは考えるのが苦手なのだろう。そのため、正体がバレてからは、ノアを求めて暴れる事しかできず、言葉もなかなか出てこない。
「指示が欲しいなら、フォキシナはいいところだよ。鍛えてもらいな」
「……ノアは」
「ノアは俺のツガイだから、世界樹に帰るよ。でも、こっちにも来るだろうから、ノアが来るたびに遊んであげればいい」
「分かっ、た。ノアに……会える、なら……なんでも、いうこと……聞く」
ノアに会わせろって事か。まあ、どうせノアは、これから屋敷に来る事も増えるだろうし、別に問題はないけど。
「それはノアに誓える?」
「うん、誓う」
悪魔は信用できないからね。少しでも、獣人の肉体に引っ張られてくれればいいけど……それにしても、ルシャが悪魔と知って、そろそろ天使側も動きそうだな。アレフに任せても……駄目か。あれは喋る気ないね。むしろ、天使も一人寄越して、バランスをとろうとしてるのか。とりあえず、これだけは天界に伝えておこうかな。
俺は天界の方を覗きながら、ノアの兄弟はもうこれ以上は必要ないとだけ伝えると、天使は騒ぎだし、神々はそんな天使を引き留めている。
はぁ……天使と悪魔の関係は、本当に面倒だね。こうなったのも、全部フェーブルアールがメルツを贄に、天使と悪魔に進化させたからだ。
世界樹から主導権を受け取った際に、天使と悪魔が誕生した過去の、重要部分が更新された。メルツという三番目の神は、自ら干渉して血肉を与えたのだと思っていたが、まさかの二番目の神であるフェーブルアールが、メルツを騙していたのだ。
フェーブルアールは、イタズラ好きの神だが、メルツのことは面白くない奴と思っていたようだ。メルツは真面目で、イタズラ好きのフェーブルアールとは正反対であり、仲は良くなかった。そんなメルツは、アレフとともに世界樹のツガイ捜しをしていたが、ある時フェーブルアールがメルツに囁いたのだ。
「───神を贄にすれば、食べた者達は進化し、世界樹のツガイを見つける鍵となる」
そんな馬鹿らしい囁きに、真面目なメルツは何故か騙されてしまった。一度も騙されなかったメルツだが、世界樹のツガイとなれば別だったのだろう。そうして、メルツは自分を犠牲に天使と悪魔を作ったのだ。
フェーブルアールは、アレフが見張ってるし、大丈夫だとは思うけど……念の為、俺も監視しておこうかな。
「シノ、アルマ、二人は今まで通り、発情期がこないようにしておいて。次に発情したら、天使を孕む事になるからね」
そう言うと、二人は深く頷いて、アルマは何かを考えるように、ノアを見ながら口を開く。
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