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ギメルの手がなくなった気がして目が覚めると、僕とラシルだけになっていて、ラシルは僕の目が完全に覚めると、ギメルではなくアス兄さんを呼んだ。
「……キュアァ」
「あれ? ノア、まだ眠い?」
少し眠いの。でも、起きる! 屋敷は久しぶりだから、いっぱい遊ぶ!
「キュア!(遊びたい!)」
僕はベッドの上で飛び跳ね、ラシルに眠くないアピールをすると、アス兄さんに捕まってしまい、ラシルもアス兄さんも真剣な表情をする。
「ノア、遊ぶ前に教えておかないといけない事があるんだよ。大事な事だから、ちゃんと聞いてほしい。それと、俺もノアが理解できてるか確認したいから、獣人になってもらえる?」
「キュン!(分かった!)」
僕が獣人になると、ラシルとアス兄さんは、僕の"望み"について話をした。僕が理解できるまで、何度も同じ事を教えてくれ、なんで駄目なのか分からない時は、その理由も教えてくれた。
「ノアの"望み"は、ノアに確認する間もなく、現実になるだろうから仕方ない。世界樹でもそこまでは分からないしね。でも、今教えた事は頭に入れておいて」
「分かった! 僕は誰かの為には望まない!」
「そう。ノアは自分の為に望む事。もしも、誰かに頼まれて、その内容が分からなければ、精霊王か俺かヤヌアール神に訊くこと。ただ、食べ物は駄目だよ。食べ過ぎてお腹痛くなったら嫌でしょ?」
お腹痛いのはやだ! 食べたい時は、おねだりするの!
その後、僕達はロイドに呼ばれて、久しぶりに家族全員でご飯を食べる事になったが、何故かラシルは外に出てくると言いだした。
「ラシル、なんで……やだ。離れるのやだ」
「ノア……どうしてそんなに可愛いんだ! ほっぺ膨らませるなんて、どこで覚えたの」
ラシルは、僕を抱きしめてグルグルと回るが、そんな事では騙されないと思いながらも、だんだんと楽しくなってきてしまい、尻尾が勝手に揺れ、声がもれてしまう。
「キュッ、キュッ」
「ノア、大丈夫だよ。すぐに迎えに来るから」
「ほんと?」
「本当だよ。それに、ノアが天界に遊びに行けるように、準備してくるだけだからね」
天界! それなら行ってらっしゃいしないと!
「ラシル、行ってらっしゃい!」
「え……なんか行きたくなくなってきた。ノアが可愛すぎる」
「兄様、ノア様が可愛いのは分かりますが、早く行って早く帰ってきますよ」
ロイドも行くの? 早く行ったら、早く帰って来れる……
「ラシル、ロイド、早く行って早く帰ってきてね」
「うんッ! ノア、行ってくるよ! 早く帰ってくるからね!」
すると、ラシルはロイドの服を引っ張り、急いだ様子でいなくなってしまった。その後、僕は母さんや父さんに、楽しかった事や寂しかった事など、屋敷を出てからの事を、何度も同じ話を繰り返しながら一生懸命話し、ご飯を食べ終わる頃には、疲れて眠くなっていた。
「ノア、眠い?」
「アシュにぃしゃん……ねみゅ……」
「アスト、ノクト、ノアを部屋に連れて行ってやるといい。今日はそろそろ……帰るだろ?」
元の姿に戻ってしまった僕は、フラフラとアス兄さんの元へ行き、アス兄さんが僕を抱えてくれる。
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