(世界樹のツガイ)

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~sideアレフ~ 「アレフ、一つ教えて。なんでいきなりメルツを?」  パピーが、ギメルとアストの準備の邪魔という名の遊びをしている時、ラシルはボクを疑うように訊いてきた。天界に来てから、ラシルの警戒が強くなっている。 「フェーブルアールが言ってたでしょ。パピーの獲物が、死んだ奴を四竜の贄にしてるのは、霊界に送ってるつもりかって」 「ノアは、また産まれてくると信じてるだけだって答えたけど……確かに、その時のアレフは微妙な顔をしてたね。珍しいと思ったよ」  それはそうだ。霊界の事を、なんであいつが知ってるんだって思ったからね。 「ボクですら、霊界がどんな場所か知らないのに、なんであいつが知ってるんだって思うでしょ。フェーブルアールは、何か隠してる。他の神々を殺してるのもあいつだって事……ラシルは知らないでしょ」  たぶん、あいつは世界樹とラシルの亀裂を利用して、監視されない抜け道を作ってる。あれでも神だし、ラシルより長生きだから。 「知らない……アレフ、いつから気づいてた?」 「世界樹の主導権がラシルに移ってから、おかしいとは思ってたよ。フェーブルアールに関しての記憶が、ラシルにも世界樹にもほとんどない。天界で、ラシルがフェーブルアールと話してるのを聞いてても、ところどころボクの記憶と違かった。それにフェーブルアールは、わざわざラシルに記憶の確認をしてるみたいに喋ってた。フェーブルアールが、世界樹に何をしたのか……ボクには、そこまでは分からないけど、たぶん何か仕掛けてる」  世界樹とラシルの亀裂は、フェーブルアールが関わってるのか、世界樹に何かを囁いたのか……世界樹に直接語りかけてたら、ボクでも分からない。だからこそ、フェーブルアールが、過去一番の最悪な神殺しをした、メルツが引っかかったんだ。メルツが、もしもベトとして魔神になってるなら、もうボクだけしか知らないと思っていた、世界樹のツガイの大切さを知る奴が増える。 「……はぁ、ちょっと待って。最悪だ」  ラシルは、フェーブルアールのことが嫌いだ。だからこそ、フェーブルアールの駒になっていたであろう事実を、受け入れたくないのだろう。 「キュン? キュン? キュン?(ラシル? 悲しい? 怒ってる?)」  パピーは、ラシルの異変に気づいたのか、心配するようにラシルに駆け寄り、鼻でラシルの手をツンツンとする。 「ごめん、ノア。大丈夫だよ」 「大丈夫じゃない! ラシル、悲しいのやだ! 僕がラシル守るもん! ラシルが怒ってるの、僕も怒る!」  パピーが獣人の姿になり、ラシルを守るように抱きしめ、毛を逆立たせて威嚇をすると、ピリつくような空気と轟音が鳴り響く。 「キュ!?」  これは……パピーの望みか。パピー、自分でやったのに怖がってるけど……可愛いだけだよ。これはパピーの望みだし、今頃天界は大変な事になってるだろうね。 「ノア、怒ってくれてありがとう。もう大丈夫だよ。ごめんね、頼りないツガイで」 「ラシル、元気でた? この音、ラシルは好きなの? お腹空いた? 僕、食べられたくない」 「お腹は空いてないよ。どっちかと言ったら、空が空腹みたいだね」  パピーは、雷の音がお腹の音だと思ったようで、食べられるのではないかと怖がっている。そんな可愛らしいパピーを、ギメルとアストも微笑ましそうに眺めているが、実際にやっている事は天界にとってはとんでもない事だった。
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