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それから、僕はソワソワしながら暫くの間待っていると、漸くラシルが僕を迎えに来てくれ、一緒にロイドの元へと向かった。
「ノア様、おめでとうございます! 天界が消え、兄様の敵が堕ちました。ノア様が見たがっていた天使にも、そのうち会う事ができると思いますよ」
「天界、消えちゃったの?」
「はい、そうですね……兄様、教えてないのですか?」
「ノアの喜びが凄くてね。俺の影響もあると思う」
天界、僕が消しちゃったの?
「マミーのお家は?」
「それなら世界樹に住む事になったよ。アレフは、ずっと一緒だからね。大丈夫」
そうなんだ! マミーと一緒! マミーも怒ってなかった。喜んでたから大丈夫? ラシルも喜んでて、みんな喜んでる。
「天使は? 怒ってる?」
「怒りません。兄様とノア様の怒りで、反省しているようです。それによって、悪魔も混乱していますが、同じ事にならないようにと、何人かがこちらに向かっていると、兄様が言っていました」
「ノアは俺の代わりに怒ってくれて、守ろうとしてくれたでしょ? これは今まで俺がしてこなかった事を、ノアがやってくれたんだよ。ありがとう。世界樹は、世界を守る事はできても、壊す事はできないから、ノアがいてくれて良かった。俺を……世界樹を守れるのは、ノアだけだよ」
僕だけ! 僕がラシルを守れる? お家守れるの?
「世界樹が花を咲かせてるのが、その証拠だよ。ノアに感謝してる」
「キュァアア! 守れた! 僕がラシルとお家守れた!」
僕は再び尻尾を振って喜び、そんな僕をアス兄さんがすぐに捕まえて、額と額をくっつけてきた。
「ノア、落ち着いて。嬉しいのは分かるよ。でも、怪我したら精霊王が悲しむ。みんな悲しむよ。一回元の姿に戻って、魔力を落ち着かせてごらん」
僕は、アス兄さんに言われた通り、元の姿に戻ってグルグル動く魔力を落ち着かせると、どうしていいか分からないほどの喜びが、漸くおさまった。
「キュン!(できた!)」
「よくできたね。偉いよ、ノア」
アス兄さんは僕の頭を撫でてくれ、僕を地面に下ろしてくれる。そこで、僕はラシルの肩に乗って、ラシルの首に巻き付いた。
「ロイド、今ので何人狩られた?」
「……ほとんどです。ちなみに純血の者は全員……さすがノア様ですね」
「そっかぁ。そうだよなぁ。初めて見るノアが、あんなに喜んでたら……でも、狩られたって事は、それだけエルフは一度決めたら一筋って事だね。俺とは相性が悪かったって事だ。まあでも、逆に言えば、エルフは世界樹じゃなく、世界樹のツガイに従う種族だって事も分かったかな。ツガイを持たない俺を否定してたのは、彼らの主人が世界樹のツガイだったからだ……なるほど。これは面白いね」
ラシルの言葉は、納得した様子でどこかスッキリとしていて、僕はロイドに似た獲物が増えて嬉しくなり、尻尾でラシルの顔を覆った。
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