(世界樹のツガイ)

8/12
161人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
〜sideラシル〜 「シノ、ルシャと天使は会わせないようにして。それと、ロイドがエルフを何人か、フォキシナに預けたいって言ってた。ノアの獲物だけど、ロイドとノクトにあげたから、ノクトにお願いする事になるんじゃないかな。一応伝えておいてくれる?」 「分かった。フォキシナにという事は、屋敷の者と同じ扱いで構わないって事だな」 「そうだよ。世界樹の周りに、そのエルフ達を配置したいんだって。エルフは暗殺に特化してるからね」 「なるほど……それにしては、目立つ外見のような気も……」  それは月の一族にとって、使える武器じゃない? エルフなんかは、身体能力以外は月として扱っても問題はないと思うよ。 「シノの方が目立つから大丈夫。獣人がエルフを超えるのは凄いよね。ノアが可愛いわけだよ」 「母上は、エルフに負けないくらいのオーラがあるからね。母上がいる時は、楽で助かるよ」  だろうね。シノの前では、誰もが恐怖せずに死んでいく。そう思うと、ノアは月の一族の月にふさわしいね。  闇夜に輝く綺麗な月……闇を抱えた者は、月の光に目を奪われる。そこを狩るのがフォキシナであり、月の一族の狩りの仕方だ。それゆえに、月に惹かれないよう、月の一族ははるか昔に心を手放した。そして、今では考えられないほど、家族というものが似合わない一族だった。  アストとノアのおかげで、フォキシナも変われたけどね。 「あぁ、なるほど……月の一族の狩りを、エルフに継承させるつもりなのか。私達が不老不死になった今、一族とは別に……私のような狩りの仕方を学ばせようと?」 「大当たり。エルフにはシノのやり方があってるからね」  シノは、一人でも問題なく狩る事ができる。自分が月だと知っているからこそ、目を奪われた一瞬を逃す事なく、フォキシナの誰よりも殺気を消し、誰よりも素早く静かに終わらせるのだ。しかし、そんなシノでも負ける存在は身近にいる。 「ついて来れるなら教えよう。それにしても……私が自分の狩りの仕方を教える事になるとは思わなかった。こんなに……こんなに可愛いノアに、私の任務中の姿は見せられないからね」 「キュルル」  ノアはシノに顎の下を撫でられ、気持ち良さそうに目を瞑り、そんなノアを、シノは緩んだ表情で見つめながら、先程からずっと話していたのだ。  ノアは、月の一族の中でも最強なんだよね。月は目を奪うけど、ノアは心も奪う……けどまあ、ノアの狩りは目的が違うけどね。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!