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「あんな風に、知らない奴に近づいてくノアも珍しいけど、見事に狩られていくね。精霊王、アレはいいの?」
「いいんだよ。ノアが狩れば狩るほど、俺も安心できるし、ギメルも悪魔をノアの……というか、俺の味方にする為に時間をかけたんだから」
「アスト、ノアに狩られるのはマイナスじゃない。寧ろプラスだ。ラシルが嫌えば、ノアは絶滅を望む可能性がある。天界の件は、この世界の頂点を決めるには、十分すぎるほどの力だった。それも、あの規模の崩壊が、たった一人の神をラシルが嫌がってたって理由だけ。ノアを頂点だと思えるが、実際は世界樹であるラシルだ。漸く、世界樹が世界樹らしくなったって事だ」
なになに? なんのお話してるの? ラシルのお話?
「キュン、キュウ?(ラシル、何かあった?)」
僕はラシルの肩に乗り、ラシルが何を思っているのかさぐろうとするが、その前にラシルが僕の頭を撫でてきた。
「何もないよ。ただ、ノアの狩りは俺の味方も増やせるんだって話」
ラシルの味方……僕の獲物はラシルの味方!
「キュァア!」
「ノアは今まで通りでいいよ。そのままでいい。嬉しい?」
嬉しい、嬉しい! ラシルも喜んでる!
「キュア、キュア、キュァア」
「っぐ……ノアが可愛すぎる。こんなに可愛いノアの求愛を聞いたら……あーあ、もう獲物達が発情してる」
僕は尻尾を振ってラシルの首を噛み、獲物達は僕の周りに集まって、膝をついていた。まるで、ラシルが一番であるかのように見えた僕は、ラシルの首に巻きついて安心する。
今までと違う。ラシルが一番で、ラシルが中心。僕のツガイなの!
獣人の姿になって、ラシルとギメルにも共有する事を伝えた後、僕はラシルの気持ちをさぐる。
獣人の方でもツガイになったら、ラシルのこといっぱい分かる!
「ノア、俺に訊いてくれたらいいのに。ノアが俺を分かるように、俺もノアのことは分かるんだよ」
「キュ? そうなの? じゃあね、知りたい! ラシル、何探してるの?」
その時、ギメルとアス兄さんの肩が揺れ、二人はラシルを見る。
「ふははッ、可愛い。本当に分かるんだね。それも、結構細かいところまで……俺が探してるのは、霊界に続く場所だよ」
「霊界! 僕も行きたい!」
「いいよ。繋がりも消えたみたいだし……ただ、行けるかは分からないよ」
繋がり? 行けないの? なんで?
三回首を傾げると、なぜか獲物が更に増え、ギメルとアス兄さんが顔を赤くして悶える。
「ノアは、ほんっとうに可愛いね! 自慢のツガイだよ!」
「キュア!」
褒められた、褒められた! ラシル喜んでくれてる! 嬉しい!
僕は嬉しくなって、ラシルに抱きついた後、ギメルとアス兄さんにも抱きつき、元の姿に戻って走り回った。
「ノアがどんどん可愛くなっていく……可愛い」
「ラシルはそうだろうな。まあ、俺から見てもそうだけど」
「ノアの活発度と、可愛さが増し増し。ツガイになってくれた精霊王に感謝だね。俺の弟、めちゃくちゃ可愛い! こんなに可愛いノアが見れて、俺は幸せものだよ!」
アス兄さんが何かを叫んでいたが、僕は気にせず走り回った。
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