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僕が走り回れば、獲物が増えていき、それによってラシルの味方が増える事が嬉しかった。
「ノア!」
ん? 誰かに呼ばれたような……あっ!
「キュン!(ルシャ!)」
僕は多くの悪魔の中にルシャを見つけて、すぐに走って行くと、ルシャも走って僕を迎えに来てくれて、そのまま抱き上げられる。
「ノア、元気そう……良かっ、た」
「キュ、キュン!(僕、元気!)」
僕がルシャに撫でられていると、ギメルを先頭にラシルとアス兄さんも来たため、僕はラシルの肩に移る。
「ルシャ、向こうは終わったか?」
「うん。でも、まだ……少し、暴れてる。フォキシナ……連れて行くくらいなら……平気」
フォキシナ? ルシャは屋敷に帰るの?
「それなら連れて行ってくれ。アスト、フォキシナにいる天使はどうだ?」
「ツガイ持ちは落ち着かないよ。でも、他は落ち着いてるかな。だから、ここにいる天使も、連れて行けば落ち着くと思うよ」
「なら、フォキシナに任せる。例の天使もいるから、ルシャは早く行け」
「分かっ……た。絶対……ノアに、近づけ……させない」
ルシャはやる事があるようで、僕の頭を撫でてから、急いだ様子でどこかへ行ってしまった。そして、ラシルの方はというと、霊界へ繋がる場所が見つかったのか、世界樹の根の近くでしゃがんだ。
「キュ?(あった?)」
「あったよ。ここだね……でも、やっぱり行けそうにないかな。霊界は生者が行ける場所じゃない」
僕は地面に下りて、世界樹の根に近づき、匂いを確認した後に、前足でチョンチョンと触れてみた。
「可愛い! ノア、何してるの?」
「キュッ、キュッ!(ここ、ここ!)」
「世界樹の根がどうし───」
ラシルは世界樹の根に触れた途端、驚いた様子で黙ってしまう。そして、目を瞑って魔力を僕に流すと、その魔力は僕からリャンへ流れ、僕の望みに似た精霊魔法が発動し、リャンはドラゴンの姿になる。
「ごめんね、ノア。ノアを通して俺の望みを押し付けた。ノアは、俺が喜ぶのが嬉しいんでしょ? それがノアの望みだから……普通にできちゃった」
「キュ?」
よく分かんない。でも、ラシルが喜んでくれるなら嬉しい!
「今なら喋れないかな? リャン……いや、メルツ」
『この精霊は、私の力を使っても声は出せません。しかし、頭に直接語りかける事はできるようです』
僕の頭に響く声は、ラシルにも伝わっているようで、ラシルが僕を抱えて頭を撫でてくる。
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