(魔界)

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「この子がノア……俺のツガイだ。メルツ……ベトになったお前は分かるでしょ」 『あぁ……愛しい子。私の……世界樹のツガイが、この世界に来てくれて良かった。連れて来たのは、やはりヤヌアールでしょうか』 「そうだよ。でも、俺はベトとなってしまったメルツにも、感謝してるよ」 『私も……今では魔神ベトとなれて良かったと、心の底から思います』  そこまで言うと、リャンの顔が僕に近づき、リャンの姿で知らない人が頭を下げた。 「ノア……私はベト。メルツという名はもう要らない。ヤヌアールとともに、ずっとあなたを捜していました。世界樹の……精霊王ラシルのツガイになってくれて、ありがとうございます」  ……僕、この人知ってる気がする。  僕は獣人の姿になり、リャンの大きな鼻に両手で触れ、リャンの中にいるベトを捜してみた。 「やっぱり、知ってる! ベト、僕知ってる! 僕、母さんに会う前に、ベトに会ったよ!」  僕は尻尾を振って、リャンの鼻に抱きつくと、リャンは目を丸くし、中にいるベトも驚く。 「ノア、母さんっていうのは、シノのことでいいんだよね?」 「うん! マミーと一緒にバンッて死んじゃって、母さんのところに産まれる前に会った!」  たぶん会った! 覚えてないけど、ベトのこと知ってる気がする……ベトは覚えてる?  僕がリャンを見ると、リャンは涙を流し、中にいるベトも泣いていた。そして、リャンは僕に擦り寄ってきたため、押し倒されそうになる僕を、ラシルが支えてくれる。 『ノア……ノアッ! 私の……愛しい子。今でも変わらず、私はノアを……世界樹を……この世界を愛しています』 「キュア! ベト、嬉しい? ラシル、嬉しい? なんで二人とも泣いてるの? 嬉しい時は笑ってほしいの。僕、笑ってる! 尻尾も振るよ! いっぱい走って、嬉しいの伝える! みんなに伝える! キュアキュア」  嬉しいね、ラシル! 嬉しいね、ベト! 僕が喜ぶと、ギメルとアス兄さんも喜んでくれるんだよ! 獲物も、ここにいないみんなも喜んでくれるんだよ! それでね、世界樹が花でいっぱいになるんだ!    僕が元の姿に戻って飛び跳ねれば、僕が飛び跳ねた場所に雪が積もり、着地の時に舞い上がった雪は花となって空中に舞う。そして、その花が世界樹の根に触れれば、そこから新しい枝が生えて花が咲く。 『ノア……良かった。ノアが世界樹のツガイで……ノアが精霊王を選んでくれて……本当に良かった』 「ベト、説明してほしい。ノアが俺のところに来れたのは、ベトの力もあるんでしょ。アレフだけじゃない。魔神になっても、ベトはメルツで、メルツもベトも同じだと、俺は思ってるよ」 『……分かりました。全てをお話します。私が知る全てを……ノアへの想いもすべて……』
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