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〜sideベト〜
「さて、次は俺の番だね。ノアがアストとギメルと遊んでる間に、済ませたい事があるんだよ。ベトの話には出てこなかったけど、何か知らないかな? フェーブルアールについて……あいつが、悪魔と天使の記憶をそのままに、転生させたかどうか。あいつの目的はなんなのか。世界樹に何をしたのか」
なぜ……なぜ、精霊王が把握できていないんだ? 悪魔と天使の記憶の方は分かる。転生に関しても予想はつく。だが、世界樹に……あいつ、何をしやがった! 世界樹が、把握できないなんて事はないはずだ!
「落ち着いてくれる? どうせ世界樹のことで怒ってるんだろうけど、今はフェーブルアールについての情報が欲しい」
『ッ……申し訳ございません。情報ですね。私が知る限りですが、これは最近になるかと思います。霊界へ来るはずの魂が二つ、霊界に来る途中で天界に昇っていきました。その二つの魂は、悪魔と天使であり、既に転生を終えています。死者を辿る事ができる私は、転生する前に調べてみました』
結局、調べても途中で邪魔が入り、フェーブルアールの住む場所から、辿れなくなってしまった事を精霊王に伝えた。すると、精霊王は「やっぱりか」と呟き、今のフェーブルアールの様子を訊いてきた。
『フェーブルアールは、まだ魂のままで……私も、どうしていいか分かりません。魔神にすべきか、このまま魂の状態で保管するか……』
「保管が一番だと思うけどね……普通は」
普通は? どういう事だ。精霊王は、転生させるべきだと思っているのか?
「こういう時は、ノアに訊いてみようか」
『ノアに……なぜでしょうか。ノアは何も知りません』
「何も知らないけど、世界にとっての最善は、ノアの選択だよ。これは何があっても変わらない」
精霊王は愛しそうにノアを見つめ、遊んでいるノアを呼ぶ。すると、ノアは耳をピクリと動かし、尻尾を揺らしながら、精霊王の元へ一目散に駆け寄ってきたのだ。
あぁ……幸せそうだ。二人とも幸せそうで、その関係が愛しくてたまらなくなる。ヤヌアール、キミもそうだろう? この二人が愛しい。この世界が愛しい。そして……この幸せを壊す奴は、誰だろうと許さない。フェーブルアール……お前が何もしてなかったとしても、私はお前を信じたりしない。今度は絶対に騙されない。
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