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「母上、失礼します」
「ノクト、今日は触ってみたらどうだ?」
「しかし……いつも母上に隠れていて、無理に触るのは可哀想です」
「それは、ノクトの顔が不機嫌そうだからだろう。ノアは私達とは違う。先祖返りなんて初めてだからな。言葉は教えてはいるが、私もこの子の言葉がなんとなくしか分からない以上、教えてあげられる事は限られる。それでも、この子は頭がいい……はずだ」
なんか難しい話してる。でも、僕は頭がいいって! 母さんは、やっと僕を認めてくれたみたい! いつも、雪遊びに夢中で狩りを忘れると、馬鹿息子って言ってくるんだよ。
「そこは、言い切ってあげてください。尻尾揺らして喜んでますよ……可愛い」
「いや、ノアは可愛いんだけど……床がないのに、歩いて行こうとするんだ。飛べる自信でもあるのか知らないけど、急にベッドから落ちる」
「ブフッ……落ちてるのではなく、降りてるつもりなのでは?」
「いや、確実に落ちてる。まっすぐしか見てないからな。だから、今度医者に見せようかと思ってる。骨折したり、頭なんて打ったら大変だろ? 床にはクッションは置いてるけどな……心配だ」
お兄ちゃんは、母さんとの話が楽しいようで、初めて笑っているところ見た。そして僕も話に混ざりたくなり、お兄ちゃんに近寄っていくと、お兄ちゃんは急に慌てた様子で僕を持ち上げた。
「ッ……危なかった」
「な? 床があるかなんて気にしてない。まあでも、触れたじゃないか。ノアから近づいて行ったしな」
お兄ちゃんは、母さんがいつもしてくれるように、腕で包んで抱えてくれる。
「……ノア」
「キュ?(なに?)」
「可愛い……フワフワだ」
「キュンキュン(お兄ちゃんの手はあったかい)」
僕はお兄ちゃんに撫でられながら、大きく欠伸をすると、お兄ちゃんは椅子に座って僕を膝の上に乗せ、僕が眠るまでは、撫でながら毛繕いまでしてくれた。
そうして、お兄ちゃんが怒らなくなり、僕を撫でてくれるようになって少し経った頃、またしても住処に入って来た人がいて、その人は僕達の敵であるクマだった。僕はすぐに、母さんの服を引っ張りながら、早く逃げようと訴えるが、母さんはなぜか笑っていて、パパもお兄ちゃんも逃げようとはせず、訳が分からないまま、クマが母さんに触れようとしたため、僕は勇気を出してクマに咬みついた。しかし、母さんはものすごく怒ってしまい、怒られる理由が分からなかった僕は、怒った母さんが怖くて住処から逃げ出してしまった。
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