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生の美魔女を見たのは初めてだった。 神崎の義母は、本当に若く美しくて、とてもじゃないが、43歳なんかには見えない。 女子大生まではいかないが、十分に独身のお嬢さんに見えた。 明るい髪色のロングヘアを綺麗に巻き、艶のある肌に、マスカラとグロスだけを乗せている。 身体も、なんともいえない色気があり、ブラウスは品良くハイネックにフリルがあるだけなのに、何故か胸が強調されていて、少し前の透ならムラムラしてしまうところだった。 よくこんなのにベッドに潜り込まれて平気だな、と隣にいる神崎をチラッと見た。 「母さん、僕の会社の上司で、畑中部長」 神崎は、淡々と透を紹介する。そりゃそうだよな、恋人だなんて言わないよなと、透は少しだけ寂しくなった。 「はじめまして。畑中といいます。いつも息子さんには助けて頂いております」と頭を下げた。 「あらそうなんですね。いつも息子がお世話になっております。今日は何か?」 母親は、訝しげな顔つきで、玄関から奥に行かせようとしない。 神崎が「とりあえず上がって貰うから」と母親を促し、やっと上げて貰えた。 これは、なかなかハードルが高そうだ、と透は思う。簡単に話なんか聞いてくれそうもない。 「お紅茶煎れますね」 母親は、そう言って大理石のキッチンに立つ。 「ああ、どうぞお構いなく」 と透は恐縮した。 なんだかこの間は随分と居心地良く感じたのに、母親がいるだけでいきなり居心地が悪い。 やはり居心地というのは場所ではなくて人が作っているんだな、と冷静に思った。 「どうぞ」 カチャリと小さな音を立ててソーサーに乗った綺麗なカップが置かれた。 ロイヤルなんとかというやつだろうか。 金の縁どりに何か高そうなマークが入っているが、透はこういう物にまったく疎く、とりあえず割らないように気をつけよう、とそっとカップを持ち上げた。 「あ、そうそう、クッキーがあったわよね、カナメ。この間、お母さん、持ってきたでしょう?あれ何処にあるの?」 「あ、ほんとに!もう、大丈夫ですので!」 透は、立ち上がろうとする神崎のシャツの裾を引いた。 ゴクリ、と唾を飲む。営業時代のテクを思い出す。 「お母様に、今日は少しご提案がありまして」 「あら、何かしら。私でお役にたてますでしょうか」 母親は、真っ直ぐに透を見た。 本当に美人だな、と思う。神崎の父親は、一体どうやって口説いたんだろう、と余計なことを考えてしまった。
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