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「神崎です。よろしくお願いします」
透が紹介し、神崎は頭を下げた。
広報のメンバー総勢12名がパチパチ……と拍手をして迎える。
女子社員達も派遣の女の子達も嬉しそうだ。
透だけが複雑な気持ちで拍手をする。
さっきも神崎は、透を見つけた途端、ニコリと笑いかけてきた。
そういう目立つことはしないで欲しい、いや、しないといけないのか?透は、更に複雑になり、眉間に皺が寄ってしまう。
なんでよりにもよってウチの部なんだ?
透は、舌打ちでもしたい気分だった。
「畑中部長、ランチ行きましょー」
昼休みになり、いきなり神崎が透のところにやってきた。
全員の視線が透達に投げかけられ、透は固まる。
「え……おふたりってどういう関係なんですか?遠い親戚とか?」
真亜子がみんなを代表して聞いてきた。
「あ、付き合ってるんですよ、僕達」
いきなり神崎は、ハッキリとそう言った。
(友達って言ったろうが!このアホ!)
心の中で毒づくがもう後には引けなかった。
どうやって乗り切ろうかと迷いあぐねていたのに、いきなり先制パンチを食らわされ、透は完全にノックダウンしてしまった。
「え、えぇぇぇぇえ?!冗談ですよね?!」
田中が叫び、みんなが口々に「うそ、やだ!」などど話し出す。東堂もやってきて「マジで?」と面白そうな顔をしている。
「嘘」とも「ホント」とも言えず、透は立ち上がった。
「神崎くん、お昼行こう」
「あ、はいっ」
飼い主に忠実な犬のように神崎は返事をし、二人でフロア中の視線を集めながら部屋を出た。
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