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「これで公認になれましたかね?」 神崎は、悪気なくそう言ってエレベーターのボタンを先回りして押してくれた。 廊下に出ても神崎は芸能人並みのオーラを放ち、他の部所の女の子達の視線を集めている。 「あー、そ、そうだな。もう公認だろう。けど、あんま、目立つことするなよ」 と釘を刺す。 透は、チラチラと周りを気にしながら必要以上に神崎に接近しないように気をつけた。 エレベーターに乗り込み、階下に向かう。 社員食堂は避けたかったので、外に食べに行くことにした。 とりあえずよく行く近所の店を避け、少し離れた定食屋に二人で入る。 普段愛想のない店の女将も、神崎を見て、みたことないような満面の笑みで「いらっしゃいませえ、こちら空いてますよぅ」と席に案内してくれた。 「ありがとうございます。部長こっち」 神崎は、そう言ってさりげなく透の手を取る。 ギョッとしたけれど、素直に手を引かれて席に着いた。 しかも、こんな小汚い定食屋なのに神崎は椅子まで引いてくれる。 「神崎くんて、もしかしていいとこのおぼっちゃんか?」 「え?」 神崎は壁に貼られたメニューを眺めていたが、透のほうを見る。 「いや、なんか色々スマートというか」 「ああ、恋人は大切に扱うようにって父親の教えで」 そう言って透に優しく微笑んでくれた。40のおっさんなのに、こんな風に大切に扱われ、気持ちがパニクってくる。 「そうなんだ…いいお父様だね」 「はい、僕、父親の50の時の子なんで、とても大切に育ててもらいました」 「そ、そうなんだ。お母様は?」 「母親は父の28歳下で、今えーと、43歳かな」 「は?なんだそれ、俺とそんな変わんない!」 透は、驚いて声をあげる。 「そうなんですか?透さん若く見えます」 そう言ってなんでもないように微笑む神崎が、透は段々と末恐ろしくなってきた。
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