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透はサバ味噌定食、神崎は唐揚げ定食を注文し、少し落ち着いた透は、ふう、と溜息をついた。
「疲れましたか?大丈夫?」
「いや疲れたっていうか、本気なのか?神崎くん俺と……」
もう一度確認のために聞いてみる。嬉しいのと迷惑なのと半々の気持ちだった。
「もちろん!僕の会社での平和には、透さんが欠かせません」
「いや、それは分かるんけど……これってカモフラージュだよな?付き合うフリ」
「透さんがそのほうがいいならそうしますけど……僕は本気で付き合いたいです」
上目遣いにこちらを見られた。
「恋愛興味ないんじゃなかったっけ」
今どき男子の気まぐれに付き合わされるのはゴメンだ。40になると傷の治りも遅い。
「そう思ってたんですけど……。透さんに会って気持ちが変わりました。透さんとなら付き合ってみたいです。若い子みたいに自己顕示欲が強くないし、一緒にいると落ち着きます」
身長は、神崎のほうが15cmは高いのに、座るとほぼ変わらない。
足がすっごく長いんだな…と透は、変なことに感慨を覚える。
「いいのか?こんなオジサン」
神崎にとっては、四十男と付き合うなんて、1種のアトラクションみたいな物できっとすぐ飽きるだろう、と考える。
けれどこのあとフられたら、会社にはかなり居づらいな…とも同時に思った。
「オジサンではないです。透さんは透さんです」
神崎は、キッパリと言い切った。
「僕は、畑中透さんと付き合いたいです」
お願いします、と神崎は艶のある茶髪をサラリとさせて頭を下げる。
「わ、分かりました……」
こんなイケメンにこんな風にお願いされて断れる奴は、いるだろうか?
あとで笑い者になろうとも、とりあえずこの状況を楽しんだ者勝ちかも、と透は心を決めた。
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