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二人でエレベーターに乗り込むと、思ったより人が多く、神崎と接近してしまった。ちょうど神崎の襟の辺りに顔がくる。
(うわ、いい匂い)
神崎からはイケメン特有の良い香りがする。少しウットリしていると神崎が耳元で「部長、いい匂いですね……」と囁いてきた。
「な……っ」
何を言ってんだ!と言いそうになり、慌てて口をつぐむ。
隣にいた中年の(自分と同じくらいの年嵩の)男が、怪訝そうにこちらを見やる。
そう、自分は中年。自覚しなくては。
神崎といると、自分も若いと勘違いしそうになってしまう。
チン…と目的の階に止まり、二人で廊下に出る。
降りた途端「もっとひっついてたかったなあ」と神崎は口にした。
「何言ってんだ、くだらない」
透は平常心を保ちながら足早に広報部に向かった。
「あー待ってくださいよう、透さん」
「ばか!こっから先は部長と呼びなさい」
長い足であっという間に追いつかれ、横に並んでくる。
全く、コイツは……
可愛いやつ…と心で笑いを噛み殺す。
仕方ないから、今日の夜は時間を作ってやってもいか、と透は思った。
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