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二人でフロアに入って行くと嫌でも注目を浴びてしまった。
とにかく神崎は目立つ。身長は185あるし、手足が長くスーツ姿はモデルのようだ。当然、サイズが無くてスーツはオーダーで作って貰ったらしい。
「お金かかるばっかでいいことないですよ」
と神崎は、困り顔で隣の山口という男と話している。
山口も嬉しそうに神崎の話を聞いてやっている。
なんだ?山口は神崎に気があるのか?
などと、つまらないことを思っていると「おはようございます」と田中真亜子がコーヒーを持って来てくれた。
「あ、悪い、ありがとう」
「いえ、ついでなんで」
田中は、ニヤニヤとこちらを見てくる。
「なんだ?」
「いえ!なんでもー」
そう言って、神崎のほうに近づいていった。
「神崎くんもコーヒー飲む?」
「あ、ありがとうございます!すいません」
神崎はペコペコ挨拶し、田中に笑顔を向けた。
「あー、朝からその笑顔見れるの最高」
田中は、嬉しそうに笑っている。
山口も「だよな、神崎の笑顔って癒しだよな」と田中と分かちあっている。
なんだ、なんだ、どいつもこいつも、神崎、神崎って。
神崎は俺の……
と思いかけてハッとする。
すっかり彼氏気取りになっているじゃないか。
どうしたんだ、俺!
しっかりしろ、と自分で頬をパンと叩いた。
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