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「こないだの新歓の時、私、若い子達と飲みに行ったでしょ?」 あー、あの時か、と透は思い出す。東堂がめちゃくちゃ酔っ払っていた、と神崎が言っていた。 「え?記憶あんの?あの日の」 井坂が笑っている。 東堂が酔っ払って透に絡んでいたのを、井坂は気の毒に思って見ていたらしい。 「あるある、私はね、酔ったフリして色々聞き出してんのよ!」 東堂は、バシン!と今度は向かいに座る井坂の頭を叩く。 「おい!やめろよ、頭は」 井坂は泣きそうな顔で自分の頭を撫でている。 「いいのよ、血行が良くなんでしょー?」 と東堂は笑っている。 まったくコイツには誰も敵わない。 黙っていれば、結構美人なのにもったいない、と思う。 「で?なんだよ、神崎に何かあんの?」 透は気になって聞いた。 「うん、それがさ、神崎くんちって、お父さんが再婚らしいのよね」 「あー、そうなんだ」 確か28歳違いだと言っていた。 金持ちの再婚で若い嫁さん、よくある話だろう。 「神崎くんと同じ大学だった女の子が言ってたんだけど。そのお義母さんがややこしい人みたいで、神崎くんのこと大学まで凄いオープンカーで迎えに来て、自分のアクセサリーみたいに連れ回してたって」 「なんだよ、それ」 「だからさ!ジジイじゃなくて、神崎くんとデキてるんじゃないかって、みんなが噂してたんだって」 「けど、きっと美人なんだろ?そんな金持ちの後妻さんだったら」 井坂が口を挟む。 「うん、すっごい美魔女らしくて。神崎くんと並んでも見劣りしないらしいわ」 あくまでも聞いただけ、なんだけどね、と東堂は付け足した。 「ふーん……。けど噂なんだろ?」 透は、信じたくなくて言った。 いくら義理でも、母親と身体の関係があるなんて普通ではない。 「うん、まあね。でも母親のほうは、神崎くんにゾッコンみたいで、それで神崎くん、別に出る必要も無かったけど、一人暮らし始めたらしいよ」 透は、あのバカでかいマンションを思い出す。 そんな理由で、1人で住んでいるなら寂し過ぎる気もした。
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