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「結局、事なかれ主義ってやつじゃないの?自分が我慢すりゃいいって思ってんだよ、きっと」
井坂がそう言うのを透は黙って聞いていた。
「あ、だから、畑中部長と付き合ってる、なんて言ったんだね、あの子」
東堂がそう言い、井坂が「げ」という顔をした。
「お前ら、付き合ってんの?」
井坂がニヤニヤしながら聞いてくる。
「だから、それは……」
透が言いかけると東堂が口を挟んできた。
「事なかれ主義なのよね、やっぱり。だって部長と付き合ってる、なんて言われたら、誰も神崎くんに手を出せないじゃん」
「だなー」
二人がケタケタ笑うのを見て、透は不愉快になる。
「そうじゃなくてさ、それはアイツの優しさなんだよ、きっと」
透が思わず言うと二人が笑うのを止めて透を見た。
「なに?マジなの?」
東堂が真剣な顔になる。
「マジなのかどうか俺も分からん!けど、少なくとも俺は、」
神崎に惹かれている、と言いかけて口ごもった。
「ふうん、わかった。ごめん、からかったりして。これからは暖かく見守るよ」
東堂が透の手を握って言う。
井坂だけは、よく分からない、と言う顔で、ビールを煽るように飲んでいた。
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