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「中学一年の時なんですよね、母親がウチに来たのが」
近所のファミレスに入り、トイレ脇の目立たない席に座る。
二人でドリンクバーを注文し、カフェオレを前にして向かいあった。
「ご両親、随分歳が離れてるって言ってたもんな。再婚だったんだな」
透は、一応、初めて聞いたように言った。自分の知らないところでアレコレ噂されているのも不快だろう。
「そうなんです。僕の本当の母親は父親の浮気癖に嫌気が差して出て行ってしまったんで。で、その後、今の母親が来たんですけど、二人が仲良かったのは、最初の三年くらいで。その後、また父親の浮気癖が出て」
そう言って、神崎は、カフェオレを啜った。
透も同じようにカフェオレを啜る。
何の香りもしない砂糖無しのコーヒー牛乳という感じだ。
「それから、僕に執着するようになってしまって……」
「そうだったんだ……」
会話が止まってしまい、これからどうしたもんか、と透は考える。
俺は『カンフル剤』になれるんだろうか?
「あのさ、言いにくいかもしれないけど、どの程度の、その……」
「あー、はい。身体の関係は無いです。母親は、父親が帰らない夜だけウチに泊まりに来て、一緒のベッドで寝ますけど。淋しいって抱きついて来るけど、さすがに母親相手には……無理です。僕も」
「そうか」
透は、ホッとして胸を撫で下ろす。そういうことなら、子離れさせてやればいいだけの話だ。
「お母さん、趣味とか無いの?例えば旅行とか」
「そうですね、以前は、父親と一緒によく海外に行ってましたけど、父親は最近他の人と行ってるみたいで……」
「なるほどね……。お母さん、友達は?」
「ああ、以前は社交的で大勢いたみたいなんですけど……。社長夫人になった途端、みんなに気を遣われすぎて疲れるようになったみたいで。あと媚びて来る人は嫌いだって言ってます」
「そうなんだね……」
寂しさ紛らすだけなら、誰でもいいはずなのにー🎶
と何かの歌が浮かんできた。
友達、友達かあ……
「あ」
いいのがいるじゃないか。
「なあ、神崎。とりあえず1度お母さんに会わせてくれるか?」
「分かりました。今、ウチに来てるので」
二人で会計を済ませ、店を出た。
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