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「ふうん、なるほど。神崎くんのお母さんの息子離れを手伝えってことね」
食事を終えて、デザートのティラミスを食べながら東堂が言った。
粗方の説明だけで、趣旨を理解してくれる。さすが頭が良い。
「うん。東堂ならそういうの得意だろ?」
「まあねえ、でもどうだろ、そんな大金持ちの奥さんなんて友達になったことないし」
「いえ、むしろそういう扱いをしないで貰いたいんですよ。普通に接して貰えれば」
「普通って?普通に旦那の悪口とか職場の愚痴とか言っていいワケ?そんなのダメでしょ?」
「いえ、いいです!それ最高です!」
神崎が身を乗り出した。
「そうなの?」
「はい。母親は、そういう愚痴を気軽に言える相手が居ないんです。淋しい人なんですよ。何処に言っても『カンザキ製パンの社長夫人』扱いで。みっともないことは言えないって淋しそうなんです」
「なるほどね……」
東堂は、何か考え込んだ。
「分かった。1度四人で会える機会くれる?そうだな、神崎くんちで四人でワインでも飲もうか」
「え?俺も?」透が言うと「アンタ、逃げる気じゃないでしょうね」と凄まれた。
あんな事を言った手前、あまり会いたくはないが仕方ない。
「わかったよ……」と了承した。
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