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第3話
モーション先輩が「あかねちゃんと二人だけで話がしたい」と、誠君に伝え、私を体育館倉庫の裏に呼び出した。
「モーション先輩?」
「あかねちゃん、やっぱり、幼馴染であるまこっちのことが好きなんだね?」
モーション先輩は、真剣な顔だった。
「はい。
ですが、誠君が好きなのは、モーション先輩って聞きました」
「あたしも、幼馴染がいるから、その気持ちはわかるんだ。
大好きだった幼馴染はあたしの気持ちに気づくことなく、他の女とくっついて、家庭を持ってしまったけれど、あかねちゃんには、まこっちが本気で好きなら、あたしのことを気にせず、ぶつかってほしいんだ。
後悔しないようにね。
幼馴染に失恋したら、辛いだけだから・・・・。
まこっちも、気づいてないだけで、もしかしたら、あかねちゃんが好きかもしれないって思うところがあるんだ。
これは、あかねちゃんのためでもあるし、まこっちのたまでもあるんだ」
「誠君は、わたしの思いなんて、これぽっちも気づいてくれないです・・・・」
「まこっちの気持ちについては、あたしの勘でしかないけれど、だけど、あかねちゃんがまこっちを好きな気持ちは本物だと思う・・・・」
「先輩、ずるいです・・・・。
私も、まこっちって呼びたいです」
「呼びたいなら、呼べばいい」
「え?」
「あかねちゃんは、可能であるはずのことを、自分で不可能にしている気がするんだ。
幼馴染なんだから、まこっちって呼んでも、何も失礼なことはないんじゃないのか?」
「それは・・・・」
モーション先輩の言うことも、正しいかもしれない。
私が何て呼ぼうと、自由なんだ。
「それに、どうして、まこっちに告白できないんだい?」
「こわいからです・・・。
誠君と今の関係が崩れることが・・・。
誠君には、弟の恋を奪うような浮気性のお兄さんもいますし、人の幸せを妬んで、攻撃をするお姉さんもいます。
だから、私が素直になったら、幸せが壊されていくような気がして・・・。
誠君を幸せにできるのは、誠君のお母さんだけなんです」
泣くことをこらえながら、私は必死に語る。
そう、自分が幼馴染にも言えないような、本心を。
「実は、人の恋を奪うことも、人を妬んでの攻撃も、自分自身を不幸にしてしまう行為でしかないんだ」
「そんなことって?」
勇気さんも、唄さんも、幸せじゃない?
「浮気をして、本当の恋が得られると思うかい?
人を妬んで、攻撃したら、何が残るんだい?
その人たちは、孤立するだけだ」
「言われてみれば・・・・」
勇気さんも、唄さんも、本当の友人もいないし、孤立しているようなものかも。
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