魔法のカレーライス

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 テレビの音とケラケラと笑う声が、リビングからキッチンまで聞こえてくる。弟の(かつら)が昼のバラエティ番組で腹を抱えているようだ。 「桂! もう高校生になったんだから、手伝いくらいしなさいよね。お父さん、車庫の片付けしてるはずだから呼んできて!」  幼い子供のように両頬を膨らませた桂が、不満そうに「はいはい」と言いながら玄関へ向かった。さて、サラダの盛り付けは既に終わっているから、カレーの盛り付けをしてなくは。  再びキッチンに戻ると、カレーの香りで胸がいっぱいになる。『お母さん特製カレー』は、東京で食べた有名店のカレーよりも断然美味しい。スプーンで一口すくって口へ含むと、忽ち頭のてっぺんから足先まで稲妻が走るような衝撃を受ける。色とりどりの味が花火のように弾け、深いコクと果物のほのかな甘味が余韻に残る。 「このレシピを教えてもらったときは、衝撃の連続だったなぁ」  お玉でくるくるとカレーをかき混ぜながら、咲乃は『お母さん特製カレー』の作り方を教わった日のことを思い返した。
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