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指示された通り、茶色くなったニンニクを瓶の中から三片取り出してすりおろす。ニンニクは疲労回復効果や免疫力向上、そして食欲不振の改善にも効果があることを知った。夏バテに悩む時期でも、『お母さん特製カレー』を何杯でも食べたくなるのはニンニクのお陰だったのかもしれない。
「よし、下拵えはこんなところかな。じゃ、お鍋を出して炒めていこっか」
コンロの上に置いた深鍋の中にバターを入れ、溶けた頃合いを見て下味のついた豚肉を入れる。色が変わるまでしっかり炒めたら、玉ねぎとじゃがいもを加えて油を絡める。玉ねぎの色が変わったら、水とすりおろし人参を加えてくつくつと煮込む。
「最後のポイントは、カレーのルーを三種類使うことかな」
キッチンの天板に並べられた、違うパッケージのカレールー。よく見ると甘口、中辛、辛口、全てバラバラだった。それぞれ鍋に入れた後、すりおろしたニンニクの醤油漬けと林檎を入れて煮込むと完成。
「咲ちゃんのおじいちゃんはね、辛いのが苦手な人だったの。でもおばあちゃんは辛いものが好きでね。一方、私たち姉妹は中間が好きだったから家族全員のわがままを叶えたみたい。でも、これでもまだ辛い辛いって言うおじいちゃんのために果物の甘みを加えた結果、複雑な味で美味しいカレーが出来たってわけ。ふふっ、変な話でしょう」
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