魔法のカレーライス

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「お、咲乃! お昼ご飯はカレーライスか。この匂い、母さんが作ってたカレーと似てる気がするなぁ」  タオルで汗を拭いながら、ダイニングの椅子に腰を下ろした父・雅之(まさゆき)。それを見た桂は、冷蔵庫から麦茶と冷えたサラダを取り出した。 「おっ、あんたもたまには気が利くじゃない」 「うるせー。これもテーブルに持っていくぞ」  三つのカレーライスが乗ったおぼんを運ぶ桂の後ろ姿を見て小さく微笑んだ咲乃は、小さく盛ったカレーライスを一つ手に持った。 「これは、お母さんのカレーライスだよ」  雅之の隣の誰も座っていない席に、咲乃はそっと優しく器を置いた。 「そりゃ、母さんも喜ぶなぁ。あとで仏壇にもお備えしないとな……その前に、よし! 食べるか!」  三人で合掌して「いただきます」と言い、スプーンで一口すくったカレーを口に含む。ここ何ヶ月間一人でも何回か食べていたけど、やっぱり何度食べても美味しいし懐かしい気持ちで胸がいっぱいになる。  やけに静かな父と弟に目を向けると、二人の目元にうっすら涙が滲んでいた。
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