ヒナは青空の夢を見る

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ヒナは青空の夢を見る

誰もが夢見る、青く高い空。 それを我が物顔で自由に飛べる羽根が、俺たちには備わっている。万人に平等に、しかも生まれつきで。 人類と鳥類との迎合が何処で起きたかは知らないが、もう遙か太古の昔から、ヒトの背中には羽根が生えている。 能力が高いほどに、大きく美しく雄々しい羽根が宿る。羽根はその美しさでランク付けされ、SSSからSまでのトップランクは見て直ぐ分かるように徽章が授与されていた。そうなると、1枚ずつの豊かさも張りも瑞々しく艶やかで、触れただけでも感嘆が漏れる程だ。 それ以下のランクは公に開示されることはなく、本人とその家族が知るだけに留まる。ランク付けは大概、小学校の入学検査と同時期に行われた。その頃から俺たちはもう格付けの対象となっている。 だからといって、己の羽根を誇示できる場所は特にない。どれだけ立派な羽根でも出しっぱなしでは日常生活に支障が出るからだ。周囲にぶつかりやすい上にバサバサと煩いし、汚れればメンテナンスの手間も掛かるし、そして何より熱が篭って兎に角熱い。だから普段は邪魔にならないように小さく折りたたんで仕舞われている。 こんもりと背中に隆起する、ハイカットシューズくらいの塊が2つ。小鳥の翼が思ったより大きいのと同じ原理だ。羽根の全長が自分の背丈を超え始める小学校高学年頃までには皆、自由に出し入れ出来るように訓練を繰り返し、公での飛行ルールを叩き込まれ、折りたたむ術を身につける。たとえ小さくなったとて羽根の輝きは変わらない。
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