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「近藤さん、聞こえますか?近藤さん」
「...」
ユウタの応答がなく、そのまま治療室へ運ばれた。
おばあちゃんがついて行くと行ったらしいが、おばあちゃんが行くのを止めて、兄貴が睡眠時間を削り、ユウタに付き添ってくれたそうだ。
ユウタはそのまま、数日眠っていた。
「おい、ユウタ」と声がした。
俺が寝ていると確かにじいちゃんの姿があった。
だけど、起き上がれはしなかった。
「ユウタ、お前はまだこっちに来たらダメだぞ」
「(じいちゃん)」
声を出そうとしたが、何故か声が出なかった。
「ユウタ。ばあさんのこと頼んだぞ。それと、じいちゃんはしっかり見てるから頑張れよ」
ただその言葉だけ残して、俺は目を閉じてしまった。
「近藤さん、近藤さん」と先生が呼ぶ声がして気が付いた。
俺は起き上がり、周りを見渡したがじいちゃんの姿はなかった。
「近藤さん」
「おい、ユウタ!俺が分かるか?」と兄貴が泣きながら抱きつかれた。
「兄貴、一体俺は…?」
「お前は意識を失っていたんだよ。だけど、気づいてよかった」
「近藤さん、念のためにもう一日入院しましょうね」
「わ、わかりました」
そして、次の日俺は無事に退院し、兄貴に頼んでお墓へと向かった。
「よし、水くんできたぞ」
「ありがとう、兄貴」
「よし!じいちゃん、また会えたね。病院の時はありがと。おかげで、俺ぴんぴんだぜ!」と笑顔で笑った。
「兄貴、ありがとう。帰ろうか。俺は片づけするから」
「悪いな。じゃあ、こっちに車もってくるわ」
「ありがとう、兄貴」
兄貴が車に戻っている間に片づけを済ました。
そして、じいちゃんのお墓の前でまた手を合わせた。
「じいちゃん、またね」とお墓の前から去ろうとした瞬間風が吹いた。
「ユウタ、ありがとう」
呼ばれた気がして、後ろを振り向いたが誰もいなかった。
ただ懐かしい声だけが聞こえた。
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