また、あえたね。

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 ***  おかしなことが起き始めたのは、五年くらい前のことだったと思う。  小学生の頃、私は親の都合で転校することが多かった。具体的には、六年間で三回も転校を経験している。六年生の時に通っていた学校も、六年のはじめに転校してきたばかりの学校だった。  夏休みの直前。お父さんとお母さん、兄貴の三人と一緒に田舎のおばあちゃん家に帰ろうとしていた。駅に向かう途中、工事現場の横の道を通ったのだが。  そこで、降ってきたのだ――上から、人が。  男の人、だったと思う。顔は分からなかった。その人はうつ伏せになるように倒れていたけれど、頭が潰れてしまって顔なんか全然わからなかったのだから。ただ、地面に激突する寸前。一瞬私と目があったような気がするのである。そして、これははっきりと聞こえた。  その男の人は、こう言ったのだ。 『また、会えたね』  どういう意味なんだろう、と思った。多分、その男の人と面識なんかなかったとはずだ。現場に居合わせてしまったし、危うく私に激突するところだったということもあって警察から話を聴かれたものだから。  名前も教えてもらったけど、全然聞き覚えのない名前で。  それに、何かおかしかったのだ。体格的にみても、明らかに大人の男の人だったのに――聞こえた声は小さな子供のそれのようだったから。男の子か女の子かはわからないけれど。 ――また、ってどういうこと?見たこともない男の人なのに、どうして。  人の飛び降り自殺を目撃して、しかも真下にいてぶつかるところだったなんてあまりにもツイていない。  でも、話はこれで終わらないのだ。  その翌年。中学生になった年の秋、またしても私は飛び降り自殺を見かけることになるのである。今度は通学中に、友達と一緒に歩いていたら、だった。オフィスビルの上から人が降ってきたのである。  今度は女の人だった。灰色のスカートのスーツを着ていたのを覚えている。またしても私にぶつかるところで、この時は友達がぎりぎり腕を引っ張ってくれたから助かったようなものだった。思えば、最初の一回の時も、兄貴が服の裾を引っ張ってくれたから助かったような気がする。  もうわかるだろう。またしても、最初の時と同じだったのだ。  その死体も地面と激突する寸前に、私と目を合わせていた。そして、去年聞いたのとまったく同じ声で言ったのである。 『また、会えたね』  子供の声。多分女の子の声だって、そう思った。でもはっきり言って心当たりなんかない。  私は震えあがった。一回ならともかく、まったく同じ出来事が二年連続で起きたのである。さすがにこれを、偶然として流すのは無理がすぎる。  自分はなにか、とんでもない陰謀に巻き込まれたのではないか。この時疑ったのはそっちだった。だから警察にも相談したのである。
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