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 タヌマレイコに脅されて以降は、二人と会うのを避けた。二人とも、自分が脅されたことは知らないようで、誘いはあったが都合が悪いと断った。  返済と借金を繰り返す日々に戻った。二時間で稼いでいたお金が、パートだと十六時間、二日も働かねばならない。一度味わった甘い汁を、美春は忘れることができなかった。パート終わりにいつものカフェで、トキメキメールに溜まっていた新着メッセージを開いた。五十代の会社員『ケイスケ』と初めて会うことになった。  ケイスケはホテルに入るなり、美春をベッドに突き飛ばした。覆いかぶさり、ストッキングを引き裂いた。ケイスケは、恐怖で泣き出した美春の頬を思いっきり張り飛ばし、そのまま犯すように行為を終えた。シーツに(くる)まって震える美春に、ケイスケは五千円札を投げつけ、部屋からいなくなった。洗面所の鏡に映る目の周りの青痣(あおあざ)に、情けなくて膝から屑折(くずお)れ、むせび泣いた。  夫の晃一には自転車で転んだと嘘をついた。本当のことなど、口が裂けても言えなかった。
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