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 一ヶ月後。五社に総額八万円の支払いを終えて、コーヒチェーンでひと息入れていると、晃一からメッセージが入った。 『言い出しにくかったけど、週末に五万円必要です。上司の披露宴です』 「えっ」と眉を(ひそ)める。 『急に言われても困るよ。断れないの?』反射的に返す。 『断るなんてむり。ごめん仕事に戻る』  しばらく唖然としたあと、ふいに涙が出てきた。言いにくいのはわかるけど、お金がない。上司の結婚式を欠席するなど無理なことはわかっている。やっと八万円返したのに、また借金だ。いつもこの繰り返しだ。元本が減るわけない。消費者金融の借金が三百万に膨れ上がる前に晃一に相談するべきだったが、後の祭りだった。  ぼんやりと動画サイトを眺めていると、マッチングアプリの広告が始まった。ここ最近、頻繁に表示される。ときどきクリックしているのを学習したのだろう。もちろん会員登録はしていない。 『今から、エッチできる人、希望』 『セフレ・婚外恋愛・身バレなし』  利用するつもりもないがクリックした。
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