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 次の日は朝からそわそわした。起きてすぐにスマホを確認するも、返信はなかった。パートの休憩時間にもトイレでこっそり見た。帰りにいつものカフェでもチェックしたが、返信はなかった。代わりに、エッチの相手を求める下品なメッセージは、十数件に増えていた。  美春は高校時代を思い出していた。初めてできた彼氏から返信があるまで夜通し待っていたし、来ないと不安になった。甘酸っぱい思い出だ。ハルヒコの返事を待つ心持ちは、あのころと似ていた。  時計の針が十一時をまわり寝ようとしていたとき、スマホが震えた。夫は風呂に入っている。慌ててスマホを開く。 『ハルミさん、こんばんは。お返事うれしいです! スタイルの良さに惹かれました(笑)会うだけでもO Kです。今週末はいかがですか?』  二回読み返した。『w』じゃなくて『笑』のところがよかった。正直そうなところも好感が持てる。ただ、いい人ぶっている可能性もある。会って嫌なら帰ればいい。しかも土曜日なら、晃一は披露宴で留守だし、美優もお友達の誕生パーティだ。返信文を考えていると、風呂場の扉が開く音が聞こえた。せわしなく右手の親指を動かす。 『こんばんは。土曜日の日中はいかがですか?』  慌てて送信ボタンを押したとき、頭にバスタオルをかけた晃一がリビングに現れた。  心の中でほっと息を吐いた。
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