魔王専属秘書はやり直したい

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アズ達は今のラナの俊敏な動きに、目を見開いたままその場で固まっていた。 「あ………」 ラナはそれを見てハッとする。た 普通にみんなの魔物を倒してしまった。 今は3人のレベル上げに付き合っているというのに自分が全部倒してしまっては意味がない。 バッと振り返りすぐに謝ろうとした。 「ほえぇ!何?何何今の!!すっご~い!」 「ラナ、こんな凄い能力隠してたんスか!?」 「見えなかった………」 だがラナの耳に入ってきたのは賞賛の言葉。 3人共ラナの方に来てわぁわぁとテンションが上げていた。 「さっすがラナ~!私が見越した通り、めっちゃ強いじゃん!逆に尊敬する~」 そうアズは言った。 「何様だよ」とクルクスが突っ込むが、ラナは時間が止まったように感じた。 私は今、褒められた…………? 思わず、昔のことを思い出す。 ◇◇◇◇◇ 「ラナゲイル、まだ威力が足りない。休むな、立て。お前が、我が軍の最終兵器だということ自覚しろ」 訓練のときは、苦痛しか覚えていない。 どんなに頑張っても、まだ足りない、出来ていない、それでは人を殺せないと言われ続けてきた。 褒められたことなど一度もない。ただ、 「はい、魔王様」 と言って従うだけ。 どれだけ苦しいことをさせられても、どれだけ疲労を感じても、魔王には逆らえない。 「次は魔方陣の訓練だ。すぐに準備しろ」 「…………………」 「ラナゲイル。返事はどうした?」 「…………はい、魔王様」 いつしか私は、ただただ返事だけをしていた。魔王の気に触ることが怖くて、ずっと控えめに行動してきた。 ◇◇◇◇◇ 褒められたのは、いつぶりだろう──── そんな昔のことと共に、ラナの顔に涙が伝った。ただ、嬉しくて。自分は、自由に生きていいんだよと、言われたような気がして。 「ラナ?どうしたの!?大丈夫!?」 ぬぐってもぬぐっても、すぐに溢れだしてくる。抑えきれない感情が、ラナの頬から滴る。 「3人共、ありがとう……………」 3人だけに聞こえるように呟く。 ラナは、やはり魔王城を抜け出したのは間違いではなかったと確信した。 ──────だがそれは、長く続かないときもある。
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