魔王専属秘書はやり直したい

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何故ここであの気配を感じるのか───? ラナはその場に立ち尽くしていた。 「ら、ラナ………?どうしたの?」 心配しているアズの言葉も頭に入らず、ただ一つのことを考えていた。 気配だけに意識を集中させる。 町の中心部。 「おい、ラナ。何があっ────」 位置が分かった瞬間、ラナは全速力で駆け出した。 ◇◇◇◇◇ 門の中に入り、大通りのど真ん中を駆け抜け、ラナはやがて町の中心部の広場に着いた。 するとそこには、町の住民達が集まって騒いでいた。 辺りを見回したラナは「すみませんっ、通してっ………くださいっ」と言いながら人混みを掻き分けて人だかりの中心に飛び出した。 そよそよと心地よい風が吹いている広場。 青々とした晴天。 さっきまで見ていた、アズ達の輝かしい笑顔を思い出す。 なんで………………… ──────そこには、もう顔すら見たくなかった相手、魔王ゲルテがいた。 「ラナゲイル。会いたかったよ」 ゲルテは言葉とは真逆の無表情かつ何にも興味を示さない低い声でそう呟いた。 「ま、魔王…………様…………」 ラナは顔をひきつらせて呆然としていた。 まさかこんな早くに見つかるとは。 想定外だった。 ガルナシティはまだ魔王軍に支配されていないからと油断しすぎていた。 魔王軍は既に支配を済ませている町から探していくと想定していたのに。 誤算だった。 「今回は少々、甘すぎたよ。ラナゲイル」 相変わらず無表情のまま冷たい声でそう言ってくる魔王にラナは心底恐怖を感じた。 「おい!嬢ちゃん!一体どういう状況なんだ!?」 ラナがバッと振り返ると、そこには初日世話になった門近くの酒屋の店主だった。 あそこの酒屋の料理の味を今でも覚えている。 いつでも明るかった店主や、優しく話しかけてくれた宿屋近くの女性達など、ここにいるみんなが不安そうな表情をしている。 私のせいだ。 魔王専属秘書という立場のくせにいつまでもガルナシティに居座ったからだ。  そう考えると自然に口が動いていた。 「皆さん!ここはとても危険です!今すぐ離れてくださいっ!」 ラナは今出せる全力の声で住民達に避難するよう呼びかけた。 「でもっ、嬢ちゃんよぉ────」 「私のことはいいですっ!!…………早く、逃げてください」 ラナが声を張り上げた途端に、住民達は理解してくれたのか一気に離れていった。 ラナが少しほっとしてゲルテの方に向く。 「おいおい、住民を逃がして、今更ヒーロー気取りか?見苦しいぞ、ラナゲイル」
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