魔王専属秘書はやり直したい

16/21
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
見ると魔王の後ろ、死角にアズ、クルクス、ソーヤが立っていた。 アズは杖、クルクスとソーヤは弓矢を構えている。 先ほどのはクルクスとソーヤの矢と、アズの魔法がゲルテに当たったのか。 アズのはステータスの弱体化魔法だろう。 ゲルテの魔法の手の締め付けが少し緩んでいる。 「3人共っ、なんで…………!」 ラナが未だ掴まれながら3人に言うと、アズが声を張り上げた。 「なんでじゃないよっ!!ねぇ、どうして何も言ってくれなかったの?そいつは何?ラナは、ずっとそいつを睨んでて、とっても苦しそうだよ!」 「………………!」 自分は無意識の内に、そんな風に見えるようなことをしていたのだろうか。 何で、こんなことも気づかれてしまうのだろう。 すると、クルクスとソーヤも口を開いた。 「ラナッ!戻るとか言ってたけど、それって本当に正しいことなのかよっ!そんなにそいつに、従わなきゃいけないのか?少なくともお前はっ、嫌そうに見えるぞ!」 嫌そうに見える? 自分はもう諦めたというのに? 「ラナがそんな奴についていくくらいなら、もっと俺達と一緒にいようッス!」 3人ともがラナに向かってそう言う。 確かに自分だって、出来るのならまだ3人とパーティーとして一緒にいたい。 だが、皆を自身の私情に巻き込む訳にはいかないのだ。 「でもっ、私はこれ以上一緒にいたら皆に迷惑がっ」 「そんなことない!私達が危険だったとき、助けてくれた人の何が迷惑だったって言うの!ラナとはまだちょっとしか過ごしてないけど、それでもっ!大切な仲間なの!」 アズは広場に大きく響く声でラナに向けて叫んでいた。それを聞いていたクルクスとソーヤも、大きく頷いている。 「私はっ、私達はまだ、ラナと一緒にいたいよっ!!」 「……………………っ!」 アズは、そう言った。 ああ、なんて素敵な人達なのだろう。 こんな情けない自分でも、大切な仲間だと、一緒にいたいと、言ってくれた。 ラナは涙を溢した。 本当に、3人といると泣いてばっかりだ。 おっちょこちょいだけど、優しいアズ。 クールだが、ラナのことを心配してくれるクルクス。 天真爛漫で、いつでも元気づけてくれるソーヤ。 私も、一緒にいたい─────
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!