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だからここ2日何も口にしていない。
水は普通に飲んでいるが、それで腹が満たされるのなら苦労はしない。
そろそろ限界だ。
元々色白なラナゲイルの肌がもっと白くなっている。
「と、とにかく、村でもいいから、人がいる場所に………」
ラナゲイルは抜け出した後、計画も立てずにほっつき歩いたことを後悔し、人を探した。
◇◇◇◇◇
方向もろくに分からずしばらく歩いていると、奥の方に何かが見えた。
「!あれは……………門?」
視界に入ったのは、門。
だが閉まっているわけでもなく、見張っている兵士がいるわけでもない。
となると、町の入り口かもしれない。
基本的に町には、旅人や観光客が自由に出入り出来るようになっているため、門が閉まっているということはあまりないのだ。
「あそこだったら人もいるし、食べ物にもありつける………!」
ラナゲイルは一気に顔を輝かせ、町の門へと駆けていった。
門へ辿り着くと、すぐ横にある看板が目に入った。
『ガルナシティ』
看板にはそう記してあった。
「ガルナシティ。ガルナ…………って、確かまだ魔王軍の支配下にない町だよね?」
魔王軍は今やほとんどの町を支配下に置いているが、まだ支配されていない町はいくつかある。この前魔王ゲルテが言っていたマルクスシティもその一つだった。
そしてラナゲイルは魔王軍の支配計画を大体把握しているので、ガルナシティが支配されていないことはすぐに分かった。
「私、めっっっちゃ運いい!魔王軍の支配下の町だったら見つかってたかもしれないしね!」
思わぬ奇跡が起きてラナゲイルの心が踊った。これでしばらく心配する必要はない。
ラナゲイルはそうと分かって、るんるんで門の中へ入っていった。
◇◇◇◇◇
「いやぁ~、お嬢ちゃん、よく食うねェ!」
そう言いながらカウンターで豪快に笑う店主と、運ばれてきた料理を爆速で食べているラナゲイルがいた。
ラナゲイルは門の中に入ってすぐ横にある酒屋で食事をしていたのだ。
おいしいっ………!魔王城のときの食事も美味しかったけど、こっちもこっちで最高だぁ………!
美味しいことを全力で顔に表現した。
2日分の空腹がどんどん満たされていく。
「…………ふ~、美味しかったです」
ラナゲイルは料理を食べ終わり、口元を拭きながら満面の笑みで言った。
すると、先ほどの店主が声をかけてきた。
「お嬢ちゃん、どこかの令嬢かい?随分綺麗な服着てるじゃないか」
「あ………い、いえ、私は別に、大したものでは………」
少し目立ちすぎてしまったか?
普通の民の見た目で町に出たことはないのでバレることはないだろうが、油断は禁物だ。
こんなに綺麗な格好をして酒屋で一人というのも何だかおかしい。
空腹で空っぽになっていた頭も、少しずつ冷静になってきた。
ラナゲイルは慌てて立ち上がる。
「わ、私はこれで!これ、お代です!」
カウンターにいる店主に向かってお金を置き、立ち去ろうとした。
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