魔王専属秘書はやり直したい

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「紹介がまだだったね、私はアズ。役職はサポーター。回復魔法は勿論、ステータスを上げる魔法も出来ちゃうよ!よろしくね~」 アズと名乗った女性がラナゲイルに向けてウィンクをした。 「それでー、こっちの2人はクルクスとソーヤ。どっちも武器使いなんだぁ」 ソーヤは「よろしくっス!」と明るく挨拶をし、クルクスの方はこちらに視線だけを向け、ぺこっと会釈をした。 「ど、どうも………」 すると、アズがいきなりラナゲイルの前でパンッと手を合わせた。 「それでさ、あなたに折り入って頼みがあるんだけど………やっぱこういう事態も想定して、魔法使いって必要になってくるじゃん?」 アズが何か企んでいるように笑みを浮かべながら明るい声でそう言う。 ……………………なんだか嫌な予感がする。 「だからね………あなた、私達のパーティーに入ってみないっ?」 ラナゲイルの想定通りの誘いだった。 当の本人は目を輝かせてラナゲイルを見つめている。後ろにいる2人も、何も言わないながらたまにこちらをチラチラを見てくる。 「あの、私パーティーにはちょっと……」 ラナゲイルが遠慮がちな態度を見せた。 自分は仮にも魔王軍に追われている身。 そもそもガルナシティにはたった1ヶ月しか滞在しない予定であったし、見つかる前になるべく早くこの王国を抜け出したい。 「えぇっ!?どうしてよぉ、私、あなたはこのパーティーに相応しいと思うの!」 それでもアズはグイグイと来る。 だがラナゲイルはそうもいかない。こちらもこちらで事情があるのだ。 ラナゲイルはなんとか説得しようと試みた。 すると、流石におれてくれたようだ。 アズ達がしゅんとした目でこちらを見ながら言う。 「……じゃあ、せめて名前だけでもっ!教えてくれない………?」 どういうつもりか名前を教えても所望してきた。断ろうと思ったが、パーティーの誘いも断り名前を教えるのも断ると、逆に怪しく見えてしまうかもしれない。 かといって本名を言ったら即座に魔王専属秘書だとバレてしまうだろう。ラナゲイルだって一応国中に名前が知れ渡っているのだ。 ラナゲイルは考えた末、案を思い付いた。 「え~っと、私は………ラ、ラナ。ラナです!家名は…………ありません」 その場で咄嗟に思いついた適当な偽名を教えた。ゲイルの部分をとっただけの本当に適当な名前だ。だが、これで魔王専属秘書とバレることは免れただろう。きっと。
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