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2. 不適切な考え。
死。
その一文字が魅力的に感じられた。
適当に生きる。適当に過ごす。
適当という言葉に魅力を感じないどころかうざったいような気がして仕方がなかった。
この考えになるということは、余程つまらなくて、言うなれば塵のような生活だったんだな。と身にしみて感じた。
この考えが果たして人間として生きる上で正しい考えなのか、それとも不適切な考えなのか。そんなことを考える頭はもう無かった。私は確実におかしくなっていた。
今日も長いようで短い透明な1日が終わった。しかし、私は何故か家に帰る気にはなれなかった。適当に生きている中でこのような感情になるのは初めてだった。とりあえずどこかへ行きたい。
だからと言って行く宛てもなく、只只駅前へ駅前へと足を進めていくしか無かった。
日は沈み、辺りは暗くなっていた。
街の灯りが目に響いた。
輝かしい駅前の灯り、道行く人の楽しそうな会話、表情。私はやはり違う種類だった。自分だけ、まるで透明人間だった。
自分だけ場違いのような、そんな気がして仕方がなかった。感情がぐちゃぐちゃになった。
いつの間にか私は走っていた。
どれほど走ったのだろう。
どれほど時間が経ったのだろう。
息が苦しくて、今にでも倒れそうだった。
必死に呼吸をし、ふと視線を上に上げると
ある建物が目に入った。
「屋上…」
私はその時神秘的なようなものを感じた。私はその場所に引き寄せられていった。
薄暗い建物に歩みを進める。階段を上る。
ここは肝試しに使われそうだな。と内心思ったが、全然怖くなかった。それほど可笑しくなっていたのだろう。
階段を上り続ける。すると4階を過ぎたところで、鉄の扉が目の前に現れた。取手捻る。錆びていて少し硬かったが、幸い鍵がかかっていなかったので開いた。
扉を開いた時、何とも言えない感情に襲われた。まるで、私の居場所、私そのものだと。
ただ1つ言えることは、屋上で見た月は今でも鮮明に思い出す事が出来るほど明るく、私を照らしていた。
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