2人が本棚に入れています
本棚に追加
4.生きる。ということ
「良かった。今何処にいるの?大丈夫?怪我とかしてない?」
そのメッセージを見て私は少し微笑んだ。いつぶりだろうか、こんな気持ちになったのは。
私は、大丈夫、此処がどこか分からないけど自力で帰るから心配しないでという趣旨のメッセージを送り、マップを見ながら家があると思われる方向へ重たい足を引きずって向かった。
マップでは駅前を通れと示しているが、行くと昨日のことがフラッシュバックしそうであまり気が乗らなかった。
しょうがなく遠回りをすることにした。
そして、何時間か歩き続けてついに見慣れた道へ着いた。
いつも何気なく通っているこの道も今は安心感が凄くて泣きそうになったがこんなところで目立つのも嫌なので堪えて何度見たか分からない景色に浸りながら歩いた。
そして家までおよそ5分くらいの場所へ着いた。
其処へ着いたらまた感情がぐちゃぐちゃなった。
だけどいつもとは何か違う感じがした。私は気づけば家のある方向へ走っていた。
怠いはずなのに、今は全く感じない息を切らしながらも家へ家へと近づいていく。
家まであと徒歩で1分掛かるか掛からないかのところまで来た。
息を整え、進んでいく。だがしかしとても足取りが重く、何十キロあるのか分からないほど長く感じられた。
緊張が凄い、今にも吐きそうだ。
必死に涙も、吐き気も堪えながら角を曲がる。
この角を曲がればついに家が見える。
そして私は角を曲がったとき一人の姿が見えた。
「お母さん…」
今まで堪えていたはもう限界だったようだ。私はお母さんへ向かって駆けていき、お母さんに縋りながらわんわん泣いた。まるで子供のように。
しかし限界だったのは涙だけではなく体もだった。
視界が暗転する。今まで生きてきたた中で一番恐怖を覚えた。
そこから何があったのか私は覚えていない__
目を覚ますと天井が見えた。しかも家とは違う天井。
私は素早く体を起こしたが、横にいたお母さんに
「まだ寝ていなさい」と言われたのでまたベットに寝っ転がる。
「お医者さんを呼んで来るわね」
そう言って母は病室を出て行った。
一人になった私はまだ覚束ない頭で必死に昨日のことを思い出そうとしたが、記憶がごちゃごちゃになっているので結局知るのはお医者さんとお母さんが一緒に戻ってきたときであった。
お医者さんが言っていたことは、
・脱水症状や風邪などで一日以上寝ていたこと。
・どうやらパニック障害の可能性があるということ
私はびっくりしたが、それと同時に少し安心もした。
どうやら経過観察であと一日は入院する必要があるとのことで、私はお母さんに今までの正直なこと話をしたりした。
途中で「気づけなくてごめんね」と言われたときは焦ったが「お母さんは何も悪くないよ。悪いのは私」などごく普通の会話をすることが出来ていることに自分自身に感動した。
私は少しだけ変わることが出来たのかもしれない。
生きるということが少しだけ分かったのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!