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彼女からは、大いなる勇気をもらった。
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1、出会い
地獄のような東北から逃げ出してきて数年経った頃、知人から唐突に連絡が入った。
「あなた(私)と似ている女性がいるから、助けて欲しい」
知人は外国人で、気の強い女性であったが、当時はそれなりに人脈がある筈だった。東京のとある弁護士会にも知り合いがいて、数名が彼女からの紹介を受け、比較的マシな対応を受けたことで、人間らしい生活を取り戻していたのだが、その彼女のサポートでもダメだと言う。
取りあえず状況を確認するために、助けを求めていると言う女性からの手紙を、知人経由で受け取った。
可愛らしい便せんに、女性的な柔らかい、丸みを帯びているが丁寧に書かれた日本語が、心を打った。
手紙の内容と文字の可愛らしさに、あまりにも大きな乖離があったためである。
当時私は関東の、比較的名の知れた法人に勤務しており、複数の国家資格を取得していたこともあり、仕事はしやすい環境だった。ただし、この業界は昭和の頃から壮絶なブラックであり、日中勤務から連続して夜勤をし、夜勤明けにそのまま翌日の日中勤務を熟すことが常識であったため、肉体はボロボロだった。職員の自殺や失踪は日常茶飯事であった。私が在籍していた時も、中堅の、優秀と言われていた資格保持者が、開業後まもなく失踪したとニュースになっていた。真面目で優秀な人ほど、追い詰められていく業界である。ちなみに東北では、私の先輩が研修中に首を吊っている。
手紙をくれた彼女は、そう言う業界の、後ろ暗いところを全く知らない、無垢で純粋な人に見えた。手紙を仲介した女性からも「心が純粋で、透明感のある、とても可愛い女性。いまは食欲が無く、頻繁に倒れて近くの内科医院に搬送されては点滴を打たれている。そうでないと生きられない」と聞いていた。
心が純粋な人だから、世間に苦しめられるのだろうか
そう思いながら、実際、彼女と会うことになった。
そして私の浅はかな予想は、見事に裏切られたのだった。
2、出会って
「はじめまして。麻野香子(あさの・きょうこ。仮名)と申します」
そう名乗った女性は、聞いていた通りの、透明感のある、非常に可愛い女性であった。どうみても日本人離れしていた。
これじゃぁ、狙われるよな
が、私が彼女に対して感じた、第一印象であった。
あまりにも可愛い。色白で、痩せて、癖のないロングヘアまでが今にも風に飛ばされそうな、透明感のありすぎる女性だった。存在感はある。透明さが顕著なだけに、後ろ暗い当時の日本の世相からは、彼女はかなり浮いて見えた。上半身だけでなく、下半身も細く、ひざから下も長いのである。
彼女がもっと目立たなくて、醜い外見で、声も野太ければ、妙な連中に狙われずに済んだだろうに…
日本と言う国は、圧倒的な外見主義である。人の中身を見る目が無い。中身を見る目が無い方が、生きやすいらしい。
首を吊った先輩や失踪した資格者は、人の中身を見すぎて、その中身の醜さに憑りつかれて、「去る」決意をしたのだった。この業界では何ら珍しいことではない。
昔から思っていたことを思い出しながら彼女の状況を聞いた。
彼女は丁寧に、説明してくれた。
自分は警察に保護されてはいるけれども、とある政党に追いかけられています―――――
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