〈少年編〉第1話 炎の証、愛の棘

1/3
前へ
/207ページ
次へ

〈少年編〉第1話 炎の証、愛の棘

 ここは白虎(びゃっこ)の国の王宮。  白伏龍(バイ フロン)はいつものように母上に伝説の話をせがんでいた。 「母上!明日は王位継承儀式の日、今日もまた伝説の武器の話を聞かせてください!」 「ええ、いいわ。それにしても、明日は楽しみね」  この世界には武器に関する伝説が数多く残っている。  天地を裂いた巨人の剣、千年生きる悪虫を屠った槍、九つの太陽を射る神の弓、空より飛来した大岩を防いだ盾。このように実在する武器だけでも語りきれないほどの数があり、架空の伝承まで入れたらそれこそ語るのに人生が短すぎるほど。 「母上、この武器の使い手はだれ?」 「わからないわ…重要なのは武器、人は所詮いつか忘れられる。だから「使い手」なんかではなく、武器の伝説の「運び手」にすぎないの」  明日で十歳になる伏龍もまた伝説の運び手になる。  ……はずだった。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加