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【第一幕】
時は一九〇〇年代初頭、外国文化が浸透しているとある港街の一角に小洒落た音楽酒場があった。その店の名は[PARADIS]、そこは身分も性別も関係なくただ音楽と酒を愉しむだけの大人たちで賑わっている。
そんな中に似つかわしくないほどの若い集団が酒場内で大きめのテーブルを陣取り、暑苦しく何やら話し込んでいる。彼らは本と原稿用紙を中央に置き、ああでもないこうでもないと言い合いながら書いては破りを繰り返していた。周囲にいる大人たちは若々しくも喧しい行動に顔を顰めていたが、それを打ち破るようにジャジーな音楽が鳴り始めたところで一同はそちらに集中する。
前奏に合わせて登場したのは三〇代半ばの女だった。派手な化粧に派手な洋装を身に纏い、ステージ中央に立って客席上方を見つめている。身体は小さいがそれなりの存在感を醸し出している女で、曲に合わせてやや低めの声で英詩を紡ぎ始めた。耳馴染みのない歌なだけに上手いのか下手なのかは不明だが、定点照明に当たって威風堂々と歌い上げる姿は艶めかしく美しかった。
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