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夢、覚めて
自分の部屋だ。卵の中ではない。
窓を見る。外はすでに明るい。今日は日曜日、別に一日中寝ていても問題はない。
横になったまま、ぐいと伸びをする。
いい夢だった。初めてで、おいしくて、本当に最高の夢だった――そう、夢だったのだ。
枕に顔を埋めて、唸る。
本物か、本当かどうかさえも分からない、夢の中の卵たち。
叶わぬ夢とわかっていても、夢見ずにはいられない。
二度と味わえないとわかっていても、また食べてみたくてたまらない。
そう思うと、最高の夢だったけど、ある意味これ以上ない最悪の夢なのかもしれない。
――また食べたいなぁ。
悶々としながら、私は布団をかぶり直した。
タマゴの言ったとおり、卵の世界は二度と現れなかった。
虚しくなるだけなので、あの夢のことはもう考えないようにした。
世界には他にもおいしい料理が山ほどあるのだからと自分に言い聞かせ、忘れるよう努力した。
そして、あの夢見からしばらく経ったある日のこと――私は最悪の不運に見舞われた。
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