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第1話 トルジカの魔女……?
ゴリゴリ、ゴリゴリ。
これは乾燥させた薬草や木の実を船型の器具で粉末状に砕く音。
取っ手付きの車輪を前後に転がして、押し潰す。
鼻孔をくすぐるスパイシーな香りは、体温を上昇させる効果があるホッカロの実。
食べるととっっっても辛くて、中でも種は舌が痺れて三日間は味がわからなくなるくらい。
少量で絶大な保温効果があるから、冬に備えて今からたくさん在庫を作っておかないと。
「アーミヤの葉は……やだ、もうほとんど残ってないじゃない」
部屋の中に所狭しと吊るされたスワッグから、目的の葉を抜き取る。
アーミヤの葉は崖に自生する上級薬草で、月明かりの下で採取しないと成分がなくなってしまう、とても手間がかかる困ったさん。真夜中の崖登りはけっこう命がけ。
またあの偏屈なカーバンクルに案内役をお願いしなくちゃ。
名札がない無数の小さな引き出しから目的の鉱石を探し当てるのも、もうお手の物。
上から三段目の右端がラピスライトで、その五段下がムーンスピラ。ほらね、青と白の鉱石が入ってた。もうスークスに場所を聞かなくたって完璧よ。
目的の薬材を追加で投入して、また車輪を動かす。
膝が痛くならないように穀物が入っていた麻袋を何枚も重ねて、中腰で体重をかけながら、ゴリゴリ。かなりの根気と力を要する、見た目以上の重労働。
だけどこの時間が一番好き。何かと悩ましい日々の中で、無心になれる貴重な時間だから。
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