第2話 一角の乙女・ユニファ

1/4
前へ
/89ページ
次へ

第2話 一角の乙女・ユニファ

「営業妨害もほどほどにしなさい!」  ふん、決まったわ!  寝起きのスークスを困らせていたのは、見るからに青二才な冒険者だった。  頭のてっぺんからつま先まで真っ黒な鎧を着てるけど、声だけでわかる。まだお尻の毛も生えてない世間知らずなお坊ちゃまね。  今どき全身鎧なんて、戦後よ? 仮装のつもりなのかしら。 「えーっと……君は? トルジカの魔女のお孫さんか?」 「あたしがこんなデカい孫がいるような歳に見えるってのかい!?」 「まぁ、それなりに」 「まぁ~~~~~ッ!」  スークスが素っ頓狂な声を上げてロッキングチェアに座り込んだ。最近シワシワの顔にさらにシワが増えたってぼやいてたから、相当ショックを受けたのね。 「ボクちゃん、スークスをいじめないで! 事実だけど」 「ぐふっ」 「君がトドメを刺してどうする!? それにボクちゃんはやめろ! というか、君は誰なんだ!?」  ふーん、ツッコミの反射神経は悪くないわね。ぽやんぽやんだけど地頭の回転は速いみたい。  でも、想像力がなってないわね。うん、全くなってない。 「誰がどう見てもトルジカの魔女スークスの一番弟子、美少女薬師ユニファちゃんでしょ!」 「知らん」 「え」 「君が薬師? どう見たって子どもじゃないか。それに美少女って、顔を隠して言うことか?」 「ん、なっ……!」  た、たしかに、ワケあって人前では紙袋を被る生活をしてるけど「お前は本当に顔だけはいいねぇ、顔だけは」って満面の笑みのスークスに言われて育ってきたのよ!?  それに子どもって、穢れ知らずな清純オーラ全開のボクちゃんに言われたくないわ! 次の春が来たら120歳になるのよ!? 「……ご所望なら薬草配合式15,874,238個を今ここで唱えましょうか?」  鬱憤の全てを飲み込んで、言ってやった。  これがオトナの対応ってやつよ。なのに――。 「いや、いい」 「そこは言わせなさいよ!」 「君のごっこ遊びに付き合っている時間はないんだ。事態は急を要する。トルジカの魔女スークス、シデ村を救うためにあなたの薬がどうしても必要なんだ」  ボクちゃんは私をさらっと無視して、スークスに語りかけた。何よ、感じわるっ。  でも、シデ村ってたしか……。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加